越後浦佐毘沙門堂裸押合大祭(新潟県南魚沼市)
新幹線での旅が好きだ。スマホをいじったり、旅のことをあれこれ考えるのにちょうどよい時間なのが好きなところだ。最近、上越新幹線のニュースを見て、ある祭りのことを思い出した。越後浦佐毘沙門堂裸押合大祭だ。
上越新幹線浦佐駅。かつてはスキー客でにぎわっていたらしいが、今やすっかり閑散としている。必要以上に広々とした駅コンコースに当時のにぎわいの名残を感じた。数十年もたてば街の景色は変わってしまう。駅から5分ほど歩いたところ、浦佐毘沙門堂で毎年3月第1土曜日に開催されているのが越後浦佐毘沙門堂裸押合大祭。こちらは1200年も続く歴史ある祭りである。数十年程度の駅の盛衰が一瞬の出来事に感じた。
さて、越後浦佐毘沙門堂裸押合大祭。1200年も続く祭りとあってか、現代の感覚からすれば奇妙に感じる。この祭りには「大ローソク祭り」との通称があるのだが、夜に行われる「ローソク講」が一番の見どころだ。これがとにかく不思議な光景だった。
上半身裸の男たちは水行を終えると、決して大きくない毘沙門堂に勢いよく詰め寄せる。彼らのなかには1本30キログラムを超える巨大なローソクを抱えているものもいる。堂内は男たちであふれ、熱気に満ちている。溶けたロウは彼らの背中を伝う。「サンヨーサンヨ」「マッケヨーマッケヨ」と掛け合いが始まる。そして木札がまかれる。やがて堂内をぐるぐるとまわり始める…。頭の整理が追い付かない。自分の周りすべてが異世界に感じる。浦佐駅は時空がゆがんでいるのか!?とさえ思った夜だった。
帰りの新幹線でスマホをいじった。あの光景はなんだったのか調べてみた。元々は正月の行事で、新年の御開帳に際し、いち早く拝もうと信者が集まったことが起源のようだ。「サンヨーサンヨー」の掛け声は「撒与(さんよ)」のことで、木札をまくことを指していたようだ。意味が理解できると安心し、ひと眠りしたらちょうど東京に着いた。
(オマツリジャパン・橋本)
【オマツリジャパン】
日本初の祭りサポート専門会社。「祭りで日本を盛り上げる」を目標に掲げ、祭りのコンサルティング、プロモーション、日本最大級のWEBプラットフォーム運営など、地方創生に取り組む。https://omatsurijapan.com
毘沙門堂の堂内