【にっぽん銘菓の旅4】「稲荷と陶芸・栗の笠間」 中尾隆之


和栗をふんだんに使った「笠間地栗のモンブラン」

 9月~10月が収穫期の栗は、成熟すると人の手を煩わせず自ら落下。それを拾いイガを裂開して1~3個の堅果を取り出し、ゆでたり焼いたり蒸したりして食用する。多く食べられるのは、饅頭(まんじゅう)や羊羹(ようかん)、最中(もなか)など多種多彩な菓子である。

 この時期、とりわけ人気なのは蒸した栗を裏ごしして茶巾絞りした秋~冬限定の中津川(岐阜県)の「栗きんとん」や、甘露煮の大粒栗にとろりとした栗あんをからませた小布施(長野県)の「栗かのこ」である。

 加えて、近年評判を呼んでいるのが笠間市(茨城県)の洋菓子「モンブラン」。バターなどを混ぜてよく練ったマロンペーストを線状に絞って山のように盛ったイタリアが発祥といわれるケーキである。

 笠間にはそれぞれ創意工夫を凝らしたモンブランを製造販売する菓子店が20軒ほど。市の農政課ではそれらを掲載した「もんぶらり旅マップ」を毎年発行。食べ歩きに誘っている。

 中でも人気の一品が、笠間駅前の洋風笠間菓子・グリュイエールの「笠間地栗のモンブラン」。さっくりしたパイ生地の上に栗カスタード、生クリーム、たっぷりの笠間栗クリームを重ねたもので、ほどよい甘さに引き立つ栗の濃厚な旨みと香りにうっとりする。

 他に栗チョコクッキーの「おちぼ栗」や栗ペースト入りの「まろんパイ」など栗菓子をはじめ取り寄せできる菓子がいろいろある。

 茨城県は栗の生産量全国一。主産地の笠間市に栗栽培が始まったのは1897年(明治30年)ごろ。年中温暖で昼夜の温度差が大きく、保水性、通気性に富む火山灰土壌など大粒で甘みがあり香りがよい栗が生育する。

 笠間といえば約1300年前にひらけた日本三大稲荷に数えられる笠間稲荷神社の門前町。御本殿は精緻な彫り物を施したみごとな総ケヤキの権現造りで、商売繁盛などの祈願で年間300万人が訪れる。

 門前通りや周辺には名物の「いなり寿司(ずし)」の店に混じって、モンブランをはじめ大粒栗がびっしりのった「栗蒸し羊羹」や砂糖をまぶした「栗甘納豆」、笠間栗が丸ごと入った「栗饅頭」などの店が軒を連ねる。

 折しも10月26日~11月24日は笠間稲荷神社境内を主会場に117年前に始まる日本最古の菊まつりが開催される。  (紀行作家)

 【メモ】=洋風笠間菓子グリュイエール(TEL0296・72・6557)。1個税込み918円(取り寄せ不可)


和栗をふんだんに使った「笠間地栗のモンブラン」


菊まつりの笠間稲荷神社

 
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