地域で「孫六温泉」再生を支援
地域団体商標の登録も実現
十和田・八幡平国立公園の乳頭山麓にある乳頭温泉郷(秋田県仙北市)。ブナの森に七つの宿が点在し、それぞれ独自の源泉からさまざまな泉質の湯が湧き出ている。あこがれの秘湯として人気が高い。
乳頭は七湯で一つ 湯めぐり帖も販売
乳頭温泉郷の7軒は、鶴の湯、妙乃湯、黒湯温泉、蟹場温泉、孫六温泉、大釜温泉、休暇村乳頭温泉郷。「七つの宿、七つの湯」として、7軒が一体となり、長年にわたって誘客促進や地域づくり、ブランド化に取り組んでいる。
例えば、七湯それぞれの魅力を堪能してもらうため、乳頭温泉郷の宿泊客に限定して「湯めぐり帖」(大人2500円、こども千円)を各施設のフロントで販売している。販売から1年間の有効期間内であれば、7軒それぞれに1回入浴できる。
湯めぐり帖
加えて「湯めぐり帖」では、乳頭温泉郷内を循環しているシャトルバス「湯めぐり号」に乗車できる。また、日帰り入浴客にも販売している「湯めぐりマップ」(千円)は、入浴料は含まれていないが、販売日に限って「湯めぐり号」が1日乗り放題になる。
湯めぐり号
事業協同組合を設立 地域団体商標に登録
乳頭温泉郷の宿7軒は、2023年7月に事業協同組合を設立した。従来の温泉組合という任意団体から、県知事の認可による「乳頭温泉郷協同組合」に態勢を一新し、ブランディング、旅行者の誘客・受け入れ、人材の確保などへの取り組みを強化している。
ブランディングの一環では、秋田県仙北市の「乳頭温泉郷」として、24年4月に地域団体商標への登録を実現した。乳頭温泉郷協同組合が発足直後の23年9月に出願し、特許庁から登録が認められた。地域名と商品・サービス名の組み合わせで登録する地域団体商標は、商標法の保護が受けられる。地域ブランドの保護、競争力の強化、地域経済の活性化につながることが期待されている。
地域挙げて事業継続 孫六温泉が秋に再開
乳頭温泉郷は危機も乗り越えた。22年、孫六温泉が後継者の不在や人材不足のため、事業の継続を断念するという事態に直面。これに対し他の宿は、「乳頭温泉郷は七湯で一つ」「孫六温泉の灯を絶やすな」との思いで一致し、共同で出資する形で、孫六温泉の経営を地域で受け継ぐことにした。
孫六温泉は、観光庁の補助事業「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」も活用して改装工事中。「山の薬師湯」といわれる秘湯の魅力はそのままに、新たに「孫六温泉―六庵―」としてプライベート感のある宿に生まれ変わる。24年秋にリニューアルオープンする予定。