【ちょっと よろしいですか 95】観光産業にこそ必要な「取材学」 山崎まゆみ

  • 2022年10月1日

山崎氏

 先月は、跡見学園女子大学春学期の「取材学(観光取材学)」の集中講義がありました。1週間に90分授業を15コマ行うという短い期間の授業は、当日までの体調管理や通常の授業以外の準備も大変でしたが、受ける学生さんも大変です。よく受講してくれたものだと履修理由を尋ねると、半数以上は「温泉と保養(観光温泉学)」を履修してくれた学生さんたち。残りは卒論制作のためにこれからフィールドワークをするので取材の仕方を学びたいというものでした。

 ゲストスピーカーには気心知れたマスコミの方々にお越しいただきました。

 まず情報番組を40年制作してきた名演出家。日本テレビ系列の日テレアックスオンに勤務され、現在は「ぶらり途中下車の旅」の総合演出をされていますが、これまでは「24時間テレビ」の総合演出、「ズームイン朝」「ズームインサタデー」などの生放送を担当した方です。成功と失敗の豊富な取材経験から、人と出会うコツなどのお話はさすがと膝を打つものでしたし、また生放送に臨む際は何十通りものアクシデントを想定して、事前に対策を立てておく仕事術は、他の職種でも応用できるお話でした。細くてもいいから取材先との関係性を長く保とうとする姿勢はとても参考になりました。

 「金田一少年の事件簿」「社長 島耕作」など多数の人気漫画を世に送った講談社の編集者は、ヒット作品を生んだ作家や編集者による物語の作り方、キャラクターの設定の仕方などを話してくださいました。人間が面白いと感じるのは「意外性」。取材によって見つかる「意外性」もあるが、日常に転がる「意外性」に気づくことも大切というお話は、授業であることを忘れ、私も前のめりにメモを取りました。

 多くの文芸作家から信頼の厚い文藝春秋の第二文藝出版部長からは、老舗の文藝誌「オール讀物」の編集長時代の経験と、スポーツノンフィクション雑誌「Number」編集部時代の取材の話をたっぷりと(「女将は見た 温泉旅館の表と裏」<文春文庫>の担当編集者でもあります)。スポーツの生の試合だから起こるちょっとしたハプニングがスクープへとつながる話は、手に汗握る緊張感が漂いました。

 その道の第一人者のお話は、多数の経験からの取材術や仕事のノウハウが満載でした。

 さらに、現場で取材を受ける側として宮城県峩々温泉の6代目にもオンラインでご登場いただきましたが、取材する者の姿勢を見ているものですね。事業継承の難しさ、温泉宿のやりがいなどのお話は学生さんも感じることがあったようです。

 一通りの座学を終えて、フィールドワークには、新潟県にご協力いただきまして「表参道・新潟館ネスパス」へ学生さんと取材に行きました。館内見学をした後、田中真佐彦館長に学生からの取材を受けていただきました。

 取材においては「誰に、何を伝えるか」を明確にすることが最も重要です。学生さんには、フィールドワーク後に、跡見学園女子大新聞(架空)に「新潟を伝える」記事を書いてもらいました。彼女たちが同世代の女性に向けて、「どうしたら新潟に興味を持ってもらえるか」を記事化したもので、「取材学」の最終レポートとして成績をつけました。

 観光地や温泉地の皆さんはよく「うちは素材が素晴らしく、絞れない。全部紹介したい」とおっしゃいます。情報を一律に並べるだけでは、伝えたい人の心には届きません。「誰に、何を伝えたいか」をきちんと定め、情報を編集してから発信しましょう。よりよい情報発信は、よりよい取材が土台となります。そのための「取材学」です。

(温泉エッセイスト)

 
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