【ちょっと よろしいですか 92】跡見学園女子大学「観光温泉学」の授業を終えて その1 ~20代女性の温泉、旅館観~ 山崎まゆみ

  • 2022年8月28日

山崎氏

 跡見学園女子大学「観光温泉学(温泉と保養)」の授業も2022年度春学期で6年目を終えました。例年、履修生は200人前後ですが、本年度は251名が授業を受けてくれました。毎年この人数を教えていると、そろそろ旅館で働く教え子も出てきました。「先生、必ず来てくださいね」と言ってくれるので、これからは彼女らを訪ねる旅も楽しみの一つになっています。

 さて、本年度の授業のゲストスピーカー1人目は、2017年度に履修しホテルで働く卒業生を予定していましたが、直前に新型コロナウイルスに感染したため実現せず、来年度に変更。この他、福島県会津東山温泉「向瀧」の平田裕一社長と、昨年惜しまれつつ閉館した東京都上野池之端の鴎外温泉「水月ホテル鴎外荘」の中村みさ子女将にお話ししていただきました。

 平田社長からは文化財の宿を守る難しさ、喜び、そしてコロナ禍での旅館経営術を、みさ子女将からはクレームがあったお客さまへの対処や気配り、美しい所作などについて、具体的な事例を挙げて教えていただきました。 

 学生さんからは「旅館で仕事をするやりがいは?」「どんな学生を取りたいか」など、宿泊施設で働くことを前提に、働いた自分を想像するための質問が多かったように感じました。授業の終わりに出た「来週、旅館の最終面接です。何に気を付ければいいですか」という質問に、みさ子女将は希望する旅館のリサーチを丹念にすることと答え、さらに面接官が印象に残るメイク法まで教えてくださる一幕も。
 そして今、ようやく授業評価が終わるところです。

 授業そのものの手間は、履修生の数によってそれほど左右されませんが、最も大変なのは最終レポートを読み採点すること。最終レポートの課題は、「温泉地や旅館の未来をデザインする」で、女子大生の視点で行きたい温泉地や旅館の未来を描いてもらいます。

 彼女らのレポートの根底には「誰もが温泉や旅館を楽しめるような人をおもんぱかる優しさ」があふれていて、私が伝えたかったことが届いているのだと安堵(あんど)しました。

 例えば、ジェンダーの問題を抱える人が入浴しやすく寛ぎやすい空間、ペットと楽しめる旅館、足腰が弱ってきた自分の祖父母が行きやすい宿にするためのアイデアなどがつづられています。

 また、自身の考えを展開する前に、自分たちの世代にとって温泉地や旅館はどういう存在なのかも書かれていますが、圧倒的に多いのは「自分たちは旅館よりもホテルを選ぶ」という意見。なぜなら授業を受ける前は温泉付きの宿泊施設に「古臭い」イメージを抱いていたからです。しかし15回の授業を重ね、平田社長やみさ子女将のように生きがいを持って旅館で仕事をする姿を見聞することで、自分たちも旅館に行きたいと思うようになったという心理の変化が起きています。その上で、どうしたら同世代がホテルより旅館に泊まるようになるのか、具体的な提案がされています。

 ある学生は「温泉地が最も多い北海道と最も少ない沖縄とでは気温の差も大きい」と指摘し、そんな気温の高い沖縄で温泉に誘うには、温泉以外の要素が必要で、いま沖縄で話題のアニメ「ステッチ!」のキャラクターを生かすのはどうか。それなら若い世代も沖縄の温泉を旅の目的にするのではないか、とアグレッシブな発想です。

 こうした女子大生たちが描く未来の温泉像は、私には未知な世界観ばかりで、目からうろこが落ちたりします。次回でさらに詳しくご紹介します。

(温泉エッセイスト)

 
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