前回の連載で「マイ温泉」の旅についてつづりました。
「マイ温泉」は、跡見学園女子大学「温泉と保養」の授業で、女子大生にさらに温泉に興味を持ってもらい、深く学び、湯めぐりを実践してほしいという目的から私がつくった造語です。
そもそも、むやみやたらに温泉に入ったとしても、大きな効果は期待できません。
「マイ温泉」とは、自分の肌質と泉質を考慮し、自分と相性が合う温泉を選ぶことを指します。さらに、誰と行くかなど、温泉に向かう目的が明確なほど、温泉がもたらす効果を増すことが期待できます。
こんな内容をつづりましたら、読者から「大切ですね」「マイ温泉、いいですね!」とご連絡を多数頂きました。また「温泉のデパート」として紹介した塩原地区の奥塩原新湯温泉「湯荘白樺」の杉山岳人さんがSNSで取り上げてくださいました。ありがとうございます。
今月から緊急事態宣言が解除され、観光復活の兆しが見えてきました。温泉地や旅館の誘客のために、さらに一歩進んだ「マイ温泉」の活用法をお届けします。
例えば、熊本県黒川温泉ではレトロなイラストが印象的な「黒川温泉 湯めぐり絵地図」が利用できます。ハンディサイズに折り畳んであり、「お肌に合わせた湯めぐり法」のページには、「黒川温泉の湯は『宿ごとに異なる泉質』です。泉質を選び、順番にめぐることで、健康や美肌作りにより効果的な湯めぐりができます」と記述されています。もちろん、泉質ごとの効果効能も明記しています。
その上で、「肌が敏感な方の美人湯めぐり」は単純弱アルカリ性↓炭酸水素塩↓塩化物と表記。「肌が強い方の美人湯めぐり」は硫酸塩↓硫黄↓単純弱酸性、「肌のトラブル解消湯めぐり」は酸性↓硫酸塩↓硫酸塩、「体質改善の湯めぐり」は含鉄↓硫黄↓硫酸塩と、実に明確な説明です。湯めぐりとは「マイ温泉」を適切に選ぶことなんです。
他のページには、宿の露天風呂や湯船の美しい写真1枚と泉質、さらにひとことコメントも掲載。持ち歩きたくなるしゃれたデザイン、軽さも大きさも、全てがgood。
もともと、日本に西洋医学が入ってくる前には、温泉は薬としての役割を担っていました。
江戸時代にお伊勢詣でと並ぶ人気の旅が「湯治」でした。皮膚病などを患った江戸の人は、殺菌効果の強い草津に湯治へ。2週間、長ければ1カ月から3カ月ほど逗留(とうりゅう)し、1日に何度も出たり入ったりして、長い時間、体を湯に浸ける。そして草津での湯治を終えると、お江戸に帰る途中に「仕上げの湯」として、肌に優しい滑らかな泉質の四万温泉等に入り、肌を整えました。そう、日本人は古来から上手に湯めぐりをしてきたわけです。
これを現代に生かせば、硫黄泉のあとに硫酸塩泉の温泉に入るという、県をまたいだ2泊旅行も考えられますし、地域内での連泊もお客さんに勧められます。
コロナウイルスがまん延しているいま、関心が高まるのは「免疫力」。これからさらに温泉の力に注目が集まります。
加えて、日本人が温泉を活用してきた歴史的背景も伝えたら、きっと海外からのお客さんも日本での湯めぐりに興味を持ってもらえるはずです。それがVJ大使の私の夢であり、目標です。
「湯めぐり」のパンフレットやWebを制作するときには、ぜひ、多言語表記もお願いします!
(温泉エッセイスト)