先日、テレビ番組を制作している15年来の女友達と旅先からのお土産の話になりました。「山崎さんがいつもくださるモノ選びがいいなと思っていたんです。帰りにハンドバッグに入る控えめなサイズ感も。なにより、かわいらしいお品を手渡しながら、キラキラした目であふれるような情熱トークを繰り広げる姿が印象的で、使う時や食べる時に、思い出して、なんだか笑ってしまうんです」。せっかく褒めてもらったにもかかわらず、あいにく友人に何を渡したのか定かでなく、2人で振り返ってみると―。
一つは新潟県松之山温泉「温泉ミスト」。えんじ色をした容器のボディはどこかレトロだけれどエレガント。たしか、松之山温泉の化石海水のお湯の特性を語った記憶があります。
もう一つは宮城県鎌先温泉「みちのく庵」の女将のアイディア商品「はちみつ電球」。これは「うち(みちのく庵)の近くに有名な養蜂所があって、お客さまに知ってほしくて。でもはちみつをお出しする時に普通の入れ物じゃ記憶に残らないなと思って。ちょうどグッドデザイン賞を受賞した電球の入れ物が目に留まりました」と、女将の受け売りを友人に披露したことが蘇りました。
友人はこう付け加えました。「地域の文化やストーリーをまとった小さいお品は、間違いなく、暮らしをほんのりと旅気分にさせてくれていました。女将さんたちや地域の人たちが作り出したものなので、包装などは素朴でエシカルなのに、中身の満足感が素晴らしかったです」。
その言葉に触発されて、私がよく手土産として購入するモノを思い出してみました。
宮城県特産の「白石温麺」の乾麺。麺がブツ切りで短いのが特徴で、そこに地域の歴史が込められています。手のひらサイズと小ぶりで、麺を包む包装紙には宮城の伝統こけしが描かれているため、東北三大こけしの話もできます。
ふるさと長岡の土産では、銘菓「長岡花火パイ」と「米百俵」を。「花火パイ」は長岡花火の歴史が話題になります。「米百俵」は俵の形をした落雁(らくがん)なので米百俵精神を説明できますし、包装紙がかつて長岡城があった頃の古地図をモチーフにしているため、戊辰戦争や河合継之助のことも語れます。
もちろん温泉地で制作した手ぬぐいなども購入しますし、帰京する日に道の駅などに立ち寄れば、土地の名産の採れたて野菜を小分けにして持ち帰ることもあります。
「山崎さんの目利きで選んだ小さなモノを通して、日本や世界の温泉文化を紹介してください!」と勧めてくれる友人ですが、実は20代~50代の女性を中心に圧倒的な支持を得る、その局の人気番組を制作していて、その番組は「モノへの愛おしさ」がそこかしこにあふれているのです。
確かな審美眼を持つ友人の言葉を借りれば、私は、モノを渡すこと以上に、その地域を知ってほしいという気持ちが強かったことに気づかされました。
そんな私からお土産を製造されている業界の皆さまにリクエストさせていただきます。
会員向け記事です。