奈良公園で歴史刻む
第792回よその旅館ホテル
──奈良公園の中にあるそうですね。
「昭和3年にお茶屋として創業して以来、シカと共存して80年以上になります(笑い)。窓を開ければシカが行き交う様子を間近に見ることができる、自然に囲まれた静かな環境が売りです。ゴールデンウイーク後は、さわやかな青葉の中、産まれたばかりの子ジカのかわいらしい姿を見られるかもしれないので、おすすめですよ」
──料理は。
「奈良の素材を取り入れた和風コースをお出ししていますが、地元の名物の一味違った味わいを楽しんでいただけるよう工夫しています。創業時からの名物である冬限定の寄せ鍋の『青葉鍋』も好評です。3月1日から2週間続く東大寺二月堂の修二会の期間には荒行にこもられる僧達の食事をアレンジしたオリジナルの『二月堂由緒料理』を召し上がっていただけます」
──客層は。
「日本各地だけでなく外国人のお客さまもお越しになります。ありがたいことに8割がリピーターのお客さまです。自然環境だけでなく、気を遣わずに過ごせる雰囲気や、お客さまとの対話から生まれるマニュアル化されていないもてなしなどを求めてお越しいただいているようです」
「数年前からは、地元のお子さまや観光客など幅広い層のお客さまと触れ合いたいとの思いから、お茶屋としての青葉茶屋の復活にも取り組んでいます。共感してくださるお客さまの協力もあって尺八の演奏会などを催すことができ、客層に広がりが出てきました」
──経営の課題は。
「小さい宿の上、料理のみのお客さまも受けているので、従業員らのローテーションを組むのが難しいことです」
【8室、1泊2食税別1万5500円から】