映画ゆかりの文化財の宿
第683回よその旅館ホテル
──「海に面した純和風料理旅館」とありますが。
「窓の外がすぐ海です。尾道の旅館では2軒しかなく、そのうちのひとつです。宿泊と会食を行っていますが、宿泊は海側の5室を利用しています」
──料理はどんなものを。
「地元の魚を使った懐石料理です。先代社長の父が板場で調理をしていました。そのせいもあって、料理には力を入れています。今の時期はアコウがおいしいです。1年を通してタイもおいしいですね。キスの子の塩辛も出していて、こちらも評判です。新鮮なキスでないとできないもので、“珍味中の珍味”と言われます。
──どんなお客さんが多いですか。
「小津安二郎監督の映画『東京物語』のロケに使われ、主演の原節子さんやスタッフがうちに泊まりました。原さんの写真をうちの応接間に飾っています。お客さまの3割ぐらいが『東京物語』のファンですね。新藤兼人監督もうちと縁があって、よく撮影に協力しました。『花は散れども』という作品は、3分の1はうちが撮影場所になりました」
「建物が登録有形文化財に指定されました。中国地方の現在営業する旅館では唯一だそうです。文化財の宿に泊まりたい、という方も多いですね」
──サービスで心がけていることは。
「『過剰なサービスはするな』というのが父からの教えです。つかず離れずで、ただ、お客さまの要望には120%おこたえするよう努めています。海に行き交う船を見ながらゆっくりのんびりしていただきたいですね」
──1泊2食の料金は。
「2万1千円から4万2千円ぐらいでお願いしています」
【5室、収容約15人】