「MICE国際競争力の強化に向けて」観光庁 有識者委員会中間報告

  • 2017年8月21日

 1 はじめに

 世界の貿易・投資・人の移動の拡大を背景に経済のグローバル化が飛躍的に進展し、国際競争が激化している中、近隣アジア諸国をはじめとした世界の主要国は、企業ミーティング(Meeting)、インセンティブ(Incentive)、国際会議(Convention)、展示会(Exhibition)からなるMICEについて、人が集まることでの直接的な経済効果、ビジネス・イノベーション機会の創出、国・都市の競争力向上という観点から、経済発展および知の集積促進のためのツールとして戦略的に取り組みを行っている。こうした国際競争環境の変化を踏まえ、わが国の国際会議誘致政策について大幅な見直しが必要との認識の下、2012年、観光庁は、コンベンションビューロー、自治体、関連事業者、有識者等の関係主体から構成される「MICE国際競争力強化委員会」を立ち上げ、翌年、国際会議誘致における各MICEプレイヤーが果たすべき役割や、都市の誘致競争力の強化等のための具体的な施策等について「MICE国際競争力強化委員会最終とりまとめ」において整理し、国際会議を中心とした各種施策を展開してきた。

 これに加え、国全体としてもMICEに係る取り組みを一層推進する必要があるとの認識から、「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」(13年6月閣議決定)において「2030年にはアジア№1の国際会議開催国としての不動の地位を築く」という国際会議誘致政策に係る新たな目標が設定された。

 さらに、「明日の日本を支える観光ビジョン」(16年3月明日の日本を支える観光ビジョン構想会議決定)において、「政府レベルで支援する体制を構築するため、関係府省連絡会議を年内に新設し、(中略)将来的に、官民連携の横断組織を構築し、オールジャパン体制での支援を実施」するとの取り組み方針を定め、「観光立国推進基本計画」(17年3月閣議決定)においても、20年に向けた中期目標を設定するなど、MICE推進は政府全体として取り組む課題となっている。

 一方、16年のわが国の国際会議開催件数は引き続きアジアで1位を維持したものの、中国は日本と並んで1位となるなど、近年、他のアジア諸国から激しい追い上げを受け、MICE誘致におけるわが国の相対的なプレゼンスが低下してきている。

 本中間とりまとめは、こうした背景において、MICE誘致・開催に係るこれまでの施策に対する評価・成果および国際競争力強化委員会・同企画小委員会における議論を踏まえ、国際会議誘致に係るさらなる効果的な施策のあり方を追求するとともに、施策対象をこれまでの国際会議誘致に加え、具体的施策が講じられていなかった企業ミーティング、インセンティブ、展示会を含めたMICE全体に拡充することを検討したものである。MICE全体への施策の拡充は、MICE政策における新たなる第一歩であり、今後、本中間とりまとめで整理した方向性に沿って国・関係業界等が議論をさらに深め、来年春頃にはMICE全体に係る目標設定や検討の必要性を指摘したMICE推進強化策の具体化とともに、オールジャパン体制で支援していくための官民連携の横断組織が構築されることを期待する。

 《参考 これまでのとりまとめ等におけるMICE誘致・開催に係る目標》長期目標=2030年には、アジア№1の国際会議開催国として不動の地位を築く(日本再興戦略)▽中期目標=2020年までに国際会議開催件数をアジア主要5カ国において全体の3割以上を占めアジア最大の開催国の地位を維持する。(観光立国推進基本計画、※アジア主要5カ国=日本、中国、韓国、オーストラリア、シンガポール)

 2 これまでの施策評価を踏まえた今後取り組むべき課題

 これまでの取り組みの進捗状況を踏まえ、16年度に国土交通省が有識者を集めて行われた政策レビューおよび本委員会のこれまでの議論において、今後の取り組むべき課題として、以下の点が指摘されている。

 【国際会議】

 (1)誘致競争力の相対的な低下

 〇コンベンションビューロー(以下「CB」)に対する自治体等のバックアップが不十分=誘致競争力強化の主導的役割を担う都市のCBの組織体制において、人的資源や財源が不足し、また定期的人事異動による専門ノウハウが蓄積されない等、都市のCBが誘致活動に必要となる組織体制へのバックアップ(投資)が十分でないケースがある。

 〇多様なニーズに対応するための地域内のステークホルダー間の連携不足=MICE誘致・開催時に発生する主催者等の多様なニーズに合致する商品・サービスを提供するために必要となる地域の幅広なステークホルダーとの連携が十分に構築できていないケースがある。

 〇JNTOとCBの役割分担の不明確さ=ナショナル・ビューローであるJNTOと地域におけるMICEの司令塔であるCBが担う役割が不明確であるため、効果的なプロモーションを十分に行うことができていないケースがある。

 〇ユニークベニュー候補施設側に意義・メリット等の理解不足=国内におけるユニークベニュー利用施設数を増やすために重要である施設側による意義・メリット等の理解不足により、ユニークベニュー施設の限定的開放となり、新規での施設開発が進んでいない。

 【MICE全般】

 (2)政府内・産学官における連携不足

 〇招請レターや在外公館によるロビー活動等政府部内での連携が不十分=招請レターや在外公館によるロビー活動等を個別に実施しているが、国際会議等誘致・開催に関する情報の集約・共有等を行い、関係府省が連携した効果的な支援ができていない。

 〇海外のMICE先進都市に存在するような政府関係者、MICEプレイヤーから構成される推進組織の不在=現在のわが国における国際会議等業界では、諸外国で見られるようなMICE業界横断的な推進組織が存在しない。

 (3)専門人材の量的・質的不足

 〇専門ノウハウを中長期的に蓄積していくために必要な人材育成プロセスの欠如=主な人材育成活動としてJNTOによる初級者・上級者セミナーが年複数回開催されるのみであり、専門ノウハウを中長期的に蓄積していくために不可欠な国際的に通用する体系的なMICE人材育成プロセスがない。

 〇CBの定期的な人事異動による専門人材不足=定期的な人事異動や観光分野からの限定的な出向人事により、専門知識や経験、国際的な人的ネットワークを持つ専門人材の育成および定着を阻害している。

 【企業ミーティング/インセンティブ/展示会】

 (4)企業ミーティング/インセンティブにおけるKPI設定の難しさ=企業ミーティングおよびインセンティブの開催決定については、各企業の独自の判断による部分が大きく、また国際的に統計データが整備されていないなど、KPIの設定に必要な情報収集が難しい。

 3 今後の取り組みの基本的方向性

 (1)MICE全体の目標の設定

 従前、MICEについて国が設定した目標は、これまでの政策が国際会議誘致を主眼としていたことを踏まえ、上記のとおり国際会議の開催のみを対象としたものとなっていた。今般、施策の対象をMICE全体に拡充することに伴い、官民挙げた挑戦に向けた各主体の取り組みの強化を喚起するために、MICE全体の数値も含めた具体的な目標を明確化し、目指すべき姿を明らかにすることが必要である。

 (2)誘致に係る“都市力”の強化

 Ⅰ役割分担の明確化およびJNTOの機能強化

 各都市のCB・JNTO・観光庁の役割分担を明確化し、各々が効果的・効率的に施策を講じられるよう整理することが重要である。また、日本全体のMICE司令塔であるJNTOの体制の強化も必要である。

 Ⅱ地域の中核となるCBの機能強化とCBを中核とする地域連携の推進

 CBを地域のMICE推進の司令塔とすべくその機能強化を図るとともに、強化されたCBを中核とする地域の関係者の連携を進め、地域の誘致競争力向上を図る。

 現在、CBに対しては、MICEのうち国際会議誘致における司令塔機能が期待されているが、国際会議以外のM、I、Eの誘致において期待される役割等についても整理することが重要である。

 (3)幅広い主体を含むTEAM JAPAN組成による総力を挙げた誘致体制の構築

 MICE推進政府機関およびMICEプレイヤーのみではなく、例えばわが国での企業会議開催・報奨旅行実施等の主体になり得る外国企業等とのビジネスおよび交流機会を有する経済団体及び日本企業等と連携するなど、幅広い主体を取り込んだ官民一体の取り組みが必要である。

 (4)MICEプレイヤーにおける人材育成・強化の推進

 MICEに携わる人材の裾野を拡大するとともに、業界を挙げた体系的な人材育成の方法を検討し、高度な専門人材を中・長期的に確保していくことが重要である。

 4 具体的施策

 (1)役割分担の明確化およびJNTOの機能強化

 〇観光庁・JNTO・CBの役割分担の徹底、JNTO体制の強化=観光庁は、わが国全体のMICE誘致戦略を策定するとともに、市場調査・普及啓発等を実施する▽JNTOは、MICE誘致戦略に基づき、ナショナル・ビューローとして、実務的観点から、CBへのコンサル、組織強化のための人材育成支援、誘致プロセスの管理・監督、誘致優良事例調査・評価等を行う。外部人材の登用を含む専門スタッフ増強、MICE部門在籍期間の長期化など体制の強化も行う。また、ミーティング・インセンティブの誘致強化策として、プログラム開発のコンサルテーション、大手ミーティングプランナー向け商談会、ウェブサイトと広告を組み合わせたプロモーションを展開する▽CBは、地域におけるMICEの司令塔として、地域における重要分野の市場分析・リード案件発掘の実施、地域関係者の調整等を行う。また、観光庁は、コンベンションビューローの組織体制強化を促進するため、外部人材の登用を含む専門スタッフ増強、MICE部門在席期間の長期化等の自治体によるバックアップ体制がなされている地域について、集中的に支援を行う▽こうした役割分担を明確化し、徹底することにより、観光庁・JNTO・CB等の人的リソースの効率的活用を図る。

 (2)地域連携の中核となるCBの機能強化とCBを中核とする地域連携の推進

 〇グローバルMICE都市のCB機能高度化=観光庁は、CBに対し▽MICE誘致・開催に必要となるプロジェクトマネジメント機能の強化(17年度予算事業)▽会議主催者・学会等の国際本部・コアPCOとの密接な関係を構築し、開催地の決定に向けてクローズドの情報を聞き出す手法を身につけるため、ロビーイング能力の育成・強化(18年度予算要求)―に関する支援を行う。

 当該支援については、コンベンションビューローの組織体制強化を促進するため、外部人材の登用を含む専門スタッフ増強、MICE部門在籍期間の長期化等の自治体によるバックアップ体制が整備されている地域を対象として、重点的に行う。

 〇グローバルMICE都市・都市力強化対策本部の設置(17年度10月めど)=グローバルMICE都市(12都市)観光庁・経産省(E)・JNTO・有識者との情報共有・課題共有等の場を創設する▽各都市が誘致に成功した案件や開催時の地域連携の成功事例、規制・法制が要因で誘致決定に至らなかった事例等を共有するとともに、国際会議等の誘致にかかる課題のうち国の規制に係るものについては、MICE推進関係府省連絡会議で検討を行う。

 〇CB主導によるMICE誘致促進地域ネットワーク強化(ネットワーク不在都市については、早期実施)=CBはコアメンバー(CB・自治体、総合シティホテル、大学、PCO、DMO等)を特定し、MICE誘致・開催地域連携ネットワークの設立を推進する▽各協議会の構成員や目標の有無等、期待される体制・活動内容を有しているか、自己確認できるチェックリスト(協議会モデル)の作成、各ネットワークの自己点検結果を観光庁において調査、グローバルMICE都市・都市力強化対策本部において進捗を確認する。

 〇CB主導によるユニークベニュー開発・活用の促進(18年度予算要求)=ユニークベニューは、地域に根付いた資源であるため、地域のMICE司令塔であるCBを中心としたユニークベニューの開発および活用促進を行う。

 (3)TEAM JAPANによる総力を挙げた誘致体制の構築

 〇MICE全般における政府一体となった取り組みの強化(17年7月策定=関係府省MICE支援アクションプラン中間とりまとめ)

 〇経団連と連携した各国に対するMICE全般における日本開催のアピール強化(17年度内早期実施)=経団連と連携し、2国間会議において日本での社内会議開催や報奨旅行の実施、国際会議の誘致・開催、展示会への出展など日本の誘致のPRを行う。その際、円滑な誘致活動を可能とするためのツールキットを整備する。

 〇商工会議所・JNTO等を通じた海外日系企業に対する働きかけ(17年度内早期実施)=在外日本人商工会議所等の会合の場を活用し、JNTO海外事務所により、訪日インセンティブ旅行促進等の情報提供と働きかけを実施する。

 〇グローバルMICE都市・都市力強化対策本部の開催

 〇「MICEアンバサダー」制度の強化(17年度内早期実施)=国際会議誘致活動に関わるキーパーソン(学会所属等)のみならず、産業界・経済界等幅広い業界におけるインフルエンサー等、影響力の大きさも認定基準とする等、「MICEアンバサダー」制度の強化を図る。

 〇関係団体との連携(17年度内早期実施)=JNTOはJETRO等と連携し、日本で開催される国際会議や国際展示会等に参加する外国人向けにテクニカル・ビジット等の情報を提供する。

 (4)MICEにおける専門的な人材育成・強化の推進

 〇MICE関連団体による人材育成プログラムの役割分担と三者連携した「MICE人材育成協議会」の設置(17年度10月めど)=観光庁、JNTO、日本コングレスコンベンションビューロー(JCCB)、日本コンベンション協会(JCMA)等から構成された「MICE人材育成協議会」(仮称)を設置し、人材育成プログラム提供対象者およびカリキュラム内容、わが国のMICEプレイヤー育成モデル(あるべき姿とアクションプランの設計等)について検討する▽「MICE人材育成協議会」において、わが国のMICEプレイヤー育成モデル(あるべき姿とアクションプランの設計等)の設計を検討する。

 〇学生インターンシップの活用強化によるMICE人材の確保(18年度予算要求)

 観光庁において求人・転職情報等と連携した学生に対するMICEプロモーションおよびMICE関係者による大学での講演の実施等を通じて、次世代のMICE人材確保に向けた興味喚起を図る▽MICE関係民間企業・団体等(CB・PCO等)学生インターンシップの受け入れ強化支援により、MICE業界への興味喚起・就業意欲向上を図る。

 5 その他個別施策

 〇MICEに係る普及・啓発の徹底(17年度内早期実施)

 観光庁・JNTOの施策等について、MICE関係者や一般に広く情報共有することを目的として、会員型の情報発信機能(メールマガジン等)を構築し、定期的な情報発信を行う。

 以上


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