
淡路島観光協会 CMO(チーフマーケティングオフィサー)高木俊光氏
淡路島の総合観光戦略
コロナ禍時も最小限の落ち込みにとどまり、現在も比較的活況を呈している淡路島。観光を支えているマーケットは圧倒的に京阪神です。90%を占める日帰りはほぼ京阪神、宿泊でも近畿圏比率が76%もある一方、首都圏はわずか6%、インバウンドは2%です。恐らく有名観光地で首都圏比率が10%を切っているのは淡路島のみ。このことは、マイクロツーリズム化したコロナ禍での状況を顧みても強みである一方、今後の成長を見据える上では、「大きな課題」でもあります。
転機を迎えている淡路島では、今後の指針となる5年間の総合観光戦略を策定し、今年はその2年目、ビジョンは「いのち輝く島」、基本理念は「知られる観光地から選ばれる観光地への転換」です。
1998年の明石海峡大橋開通後、マスツーリズム全盛の中で時代の変化を先読みし、個人化や地産地消、ユニバーサル化など、先んじて取り組んできた淡路島ですが、さらなる成長、繁栄のためには今がまさしく正念場と考えます。
首都圏やインバウンドの富裕層を誘客するための戦略の柱は二つ。一つは宿泊施設を中心とした高付加価値化です。これは選ばれる観光地のための必須の前提条件であり、消費単価アップにも直結し、ひいては業界最大の課題である人材不足解消にもつながります。
もう一つは、島ならではの本物体験コンテンツの充実です。東京以西では例を見ない食料自給率110%を誇る淡路島。御食国に始まり、先人の創意工夫、努力によりブランド化された食材が多数あり、農業、漁業、畜産業の生産現場はまさしくSDGs系体験コンテンツそのものです。他にも淡路瓦、線香、手延べ素麺などの伝統産業、古事記に国生みの島として記載されている海人の活躍の歴史等々、ポテンシャルは枚挙にいとまがありません。ただし、それらを磨き上げ、予約し体験する仕組み作りが追い付いていず、観光協会の喫緊の課題となっています。
来年は、大阪・関西万博が開催されますが、淡路島では会期を同じくして「AWAJI島博」を開催します。その後も大阪IR、神戸空港国際化というグローバル化のチャンスが連続し、このターニングポイントでうまく方向転換するために、観光協会のミッションは責任重大です。
未来型モビリティ、空飛ぶクルマの実用化も早期に実現しそうです。そうなると関空から淡路島は約15分。既に洲本温泉では、ポートの整備にも着手しており、近い将来せとうちのゲートウェイ島として、アイランドホッピングによる新ゴールデンルートも視野に入れながら、夢を現実にしていく所存です。