「平泉」が世界文化遺産に登録


世界文化遺産登録が決まった平泉の中尊寺

世界文化遺産登録が決まった平泉の中尊寺

 フランス・パリで開催の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第35回世界遺産委員会は6月26日(現地時間25日)、日本政府が推薦した「平泉の文化遺産」(岩手県平泉町)を世界文化遺産に登録することを決めた。国内の世界遺産は同月24日に登録が決まった「小笠原諸島」(東京都小笠原村)に続いて16件目。このうち文化遺産は12件目で、東北では初となる。東日本大震災で東北地方への観光入り込みが落ち込む中、「復興の起爆剤に」と、地元と観光関係者の間で期待が高まっている。

 「平泉の文化遺産」(平泉—仏国土<浄土>を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群—)は、国宝の金色堂で知られる中尊寺、浄土式庭園の毛越寺をはじめ、観自在王院跡、無量光院跡、金鶏山など、平安末期に東北を支配した奥州藤原氏に関連する5つの史跡で構成。

 今回、「建造物と庭園の複合体が現世における浄土を象徴的に表している」として、登録が認められた。

 平泉は2001年、世界遺産暫定リストに登載され、2008年に登録推薦されたが、浄土思想と関連が薄い史跡があるとの指摘があり、ユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)から「登録延期」を勧告され、見送られた経緯がある。日本の推薦による世界遺産候補で「落選」は初めてだった。

 今回政府は、対象とする史跡を6つに絞り、登録へ再挑戦。今年5月にはイコモスから柳之御所遺跡を構成資産から外すことなどを条件に「登録」勧告が出され、悲願の登録は確実とみられていた。

 今回の世界遺産登録は、東日本大震災からの復興に向けて、大きな弾みとなりそうだ。

 平泉町観光商工課の高橋和夫課長補佐は「3年前に登録延期となり、地元はだいぶ落胆したが、取り組みが実を結んで本当によかった」。町の観光客数は今年のゴールデンウイークに前年の85%減と落ち込んだが、「この土、日曜日は平年並みに戻ったようだ。天候がよくなればさらに増えるはず」と手ごたえを感じている。

 岩手県観光課の三浦巧主任は「いろいろ経緯があったので、やっとという感じ。岩手県では来年DC(デスティネーションキャンペーン)、今年7月からはプレDCが始まる。県南の平泉にとどまらず、北部も含めて県全体にお客さまが来ていただければ」と話した。

 平泉観光協会会長を務める平泉レストハウスの小野寺邦夫社長は「世界の人に平泉の歴史遺産を認められて誇りに思う。被災地に配慮しつつ、素直に喜びたい」。

 平泉に近い一関市厳美渓の旅館「いつくし園」の菅原清忠常務は「登録は大変嬉しい。その価値がやっと世界に認められることになった。登録が救いの光となって、その恩恵が被災地など多くの人に行き渡るようになれば」と述べた。

 旅行会社も商品化に動く。JR東日本は東北応援商品や地元密着型の旅行商品「旅市」で平泉の専用パンフレットを展開する予定だ。

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