観光施策の新たな財源創出を検討している観光庁の有識者会議「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」(座長・山内弘隆一橋大学大学院商学研究科教授)の第6回会合が10月31日に開かれた。中間報告への実質的な議論が終了し、11月中に提言がまとめられる。提言文の内容は調整中だが、年間数百億円の創出を念頭に、出国税の導入を提言する方向だ。
検討会は非公開。観光庁の説明によると、委員の検討の方向性としては、創出した財源の使途について、(1)受益と負担の関係から、負担者の納得感が得られること(2)先進性が高く、費用対効果が高い取り組みであること(3)地方創生へ貢献するものであること―などが要件に挙げられている。
使途のイメージでは、事例として(1)地域固有の文化、自然などを活用した観光資源の整備の深度化(2)ICT、ビッグデータ、先端技術の活用などによる日本の魅力発信のレベルアップ(3)最新技術を活用したCIQ・保安体制、チェックイン手続きの強化・迅速化―などが想定されている。
これらの施策に必要な予算額は、年間数百億円程度という規模が示された。政府全体の今年度当初予算のうち、中核的な観光施策の予算の合計額が約700億円であることから、必要な予算規模として算定された。
財源創出の手法では、日本人の海外旅行者、外国人の訪日旅行者の出国時に負担を求める租税方式を提言する方向で調整が進むとみられる。出入国、航空旅行、宿泊のいずれかの行為に際して旅行者に課税、課金する手法が検討されてきたが、観光関係業界へのヒアリング、諸外国の事例を踏まえ、出国税が妥当との意見が委員の間で大勢を占めている。
出国税導入の場合、負担対象者は、2016年の実績で言えば、訪日外国人が約2400万人、出国日本人が約1700万人という範囲。定額で「千円」を課税すると、400億円超の税収が得られる。検討会が旅行需要への影響などを考慮して、徴収額についてどのように提言するか注目される。
出国税など新たな財源確保策の導入時期については、2020年の東京五輪・パラリンピックを見据えて、「可能な限り早期に」との意見が複数の委員から上がっているという。
観光庁は、11月中にまとめられる検討会の提言を受けて、年末の税制改正への要望内容を具体化する予定だ。