人手不足、「2024年問題」が拍車
日本観光施設協会が5月9日に行った定時総会で、日本バス協会の山本昇平常務理事が「バスの現状と課題」をテーマに講演した。山本氏は深刻な人手不足が路線バス、貸し切りバスの運行など会員の事業に大きな影響を与えていると指摘。今年4月にバス運転者の拘束時間、休息期間などの基準が改正された、いわゆる「2024年問題」も問題に拍車を掛けているとし、国による支援やバスによるツアーを催行する旅行会社の理解を求めている。以下は講演の要旨。
少子高齢化の影響や交通手段の多様化に伴い、バスの輸送人員が年々減少傾向にある。
加えて、新型コロナウイルス感染症の影響や、運転者などの不足、近年の燃料価格高騰を受け、事業者の経営は大変厳しい状況だ。
最も深刻なのは人手不足だ。深刻なバス運転者などの不足に対応するため、労働条件や賃金の改善、乗合バスの減便や貸し切りバスの運行時間の短縮ほか、外国人バス運転者の受け入れが実現するよう、特定技能制度の対象分野への追加、および大型第二種免許が円滑に取得できるための制度の見直しが必要と考える。
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新型コロナウイルス感染症による業界への影響について。国土交通省の調査によると、高速バス等は今年2月の運送収入がコロナ禍前の2019年同月比で70%以上減少の事業者が全体の15%。輸送人員は全体で19・7%減少するなど厳しい状況が続いている。
一般路線バスについても運送収入が19年同月比で30%以上減の事業者が全体の5%。輸送人員は9.2%減となるなど、高速バス等と同様に厳しい状況が続いている。
3月以降も高速バス等、一般路線バスともに、引き続き厳しい状況となる見通しだ。
貸し切りバスについては、今年2月において運送収入が19年同月比で50%以上減少した事業者は約10%。3月以降も1~2割の事業者が50%以上の運送収入減少を見込んでいる。
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バスの運転者数は、22年に12万1千人が必要なところ、実際は11万4千人と、7千人足りない。
さらに、「2024年問題」。運転者の労働条件が変わり、22年の輸送規模を維持するには12万9千人が必要なところ、24年に10万8千人、30年に9万3千人と運転者数がさらに減ることが日本バス協会により試算されている。
対応として、乗合バスは夜間から深夜時間帯の減便や、最終バスの繰り上げ、利用の少ない昼間帯の減便を行っている。
利用の少ない路線・系統については、廃止や運行の短縮を行わざるを得ない状況だ。
日本バス協会の調査では、2024年問題に起因して路線バスを減便した(予定を含む)事業者は全体の80%。減便規模はコロナ前との比較で約2割となっている。
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貸し切りバスについては、宿泊を伴う(同じ運転者が乗務する)行程で夜遅くまで運行した際、労働条件の改正により翌朝の出発時間を遅くする必要があるなど、従来の旅行行程が組めなくなる可能性がある。
夜遅くなる貸し切り行程は、例えば修学旅行での夜の観劇、夜景観賞、インバウンドの受け入れ(夜到着便)など。運転者が夜10時に退勤し、今までは翌日の朝6時30分に出勤するなど休息期間が8時間30分だった場合は、休息期間の下限が9時間となったことから出発時間を30分遅らせる必要がある。
今後の課題として、労働条件の改正内容をバスの利用者や旅行会社など、関係者に理解してもらう必要があり、その周知徹底が必要。
大型第二種免許取得費用への補助、外国人材の活用など、運転者確保のための国による一層の支援も必要だ。
日本バス協会・山本常務理事の講演