JNTO、重点市場の動向を紹介~訪日旅行フォーラムで


東京都内で開催したフォーラム

 日本政府観光局(JNTO)は11日、インバウンド旅行振興フォーラムを東京都内のホテルで開催した。海外事務所の所長らが現地情報を交えて最新の市場動向を報告した。

 政府の重点市場20カ国・地域の動向などについて説明した。訪日旅行者数全体の約7割を占める東アジア4市場の主な内容を紹介する。

個人旅行化が進展~中国市場

 中国からの訪日旅行者数は、今年上半期(1~6月累計)で前年同期比6・7%増の328万人。各月で最高値の更新が続き、堅調に推移しているが、今年2月以降の各月の伸び率は1桁にとどまっている。

 伸び率の鈍化の要因として、中国経済の減速や海外旅行市場の変化を挙げた。中国経済についてJNTO北京事務所の服部真樹所長は「政府の目論見通り安定的に減速。物価が安定して推移する中、賃金、所得の伸びが徐々に緩やかになってきている」と指摘。海外旅行者数(香港、マカオなど含む)は、16年が前年比4・3%増の1億2200万人となり、以前に比べて伸び率が縮小しているという。

 訪日観光客では、個人旅行化、リピーター化が進展している。個人旅行と団体旅行の比率は、10年にはおおむね2対8だったが、個人旅行の比率が年々高まり、16年に入って5割を超えた。今年1~3月期はおおむね6対4となった。今年5月の査証(ビザ)の要件緩和に伴って個人観光の数次ビザの発給も増加している。訪日回数が2回以上のリピーター率も、15年には27・5%だったが、16年には33・3%に上昇した。

 トレンドの変化では、中国発の訪日クルーズ船は、運航本数は伸びているが、乗船率が低下しているという。供給過剰に加えて、ミサイル防衛システム配備に絡む中韓関係を反映したとみられる韓国に寄港しないコース設定などが要因の一つに挙げられている。

 宿泊形態では、民泊が増加している可能性がある。民泊の利用状況を示す正確なデータはないが、観光庁の訪日外国人消費動向調査では、宿泊先として旅館、ホテル以外の「別荘・コンドミニアム」「ユースホステル・ゲストハウス」「その他」を挙げる回答が16年夏ごろから増加している。服部所長は「民泊新法の施行とともに、さらに民泊が増えるのではないか」と指摘した。

コト消費の志向も~韓国市場

 韓国からの訪日旅行者数は、今年上半期で前年同期比42・5%増の340万人。北朝鮮問題の訪日観光への影響はほとんどなく、海外旅行者数も好調に推移している。訪日観光に関しては、LCC(格安航空会社)の地方路線の拡充などが需要を喚起している。

J NTOソウル事務所の熊野伸彦所長は、韓国の消費トレンドとして、「TRYSUMER」(挑戦+消費の造語、コト消費)、「SmallLuxury」(小さな贅沢)、「1conomy(1人+経済の造語、お一人様需要)、「Active Senior」(シニア消費)などのキーワードに注目した。

 これらのキーワードを踏まえ、今年度のプロモーションのコンセプトを「自分らしくもっと、日本でもっと」に設定している。コンセプトに基づき年齢、ターゲット別にPR映像を製作するなど、地方への誘客につながる広告宣伝を強化している。

品質追求型の消費~香港市場

 香港からの訪日旅行者数は今年上半期で前年同期比24・8%増の108万人。訪日需要を支えているのは、LCCを含めた日本・香港間の航空座席供給量の拡大で、上半期で16・5%増となっている。

 訪日香港人旅行者の特徴は、政府の重点20市場の中で、旅行者1人の1泊当たりの旅行支出が最も高いこと。香港事務所の薬丸裕所長は「自分が求める価値ある商品・サービスには然るべき対価をいとわない品質追求型の消費」と指摘する。リピーターも多く、訪日経験回数が10回以上の比率は22%に上り、重点20市場の中で最多となっている。

 訪日プロモーションでは、地方で癒しやリラックスを実感する「ゆるたび」をコンセプトとした旅行をPR。フェイスブックでの情報発信やオフ会、イベント、現地メディアとの連携などを通じて、消費者と共に新たなトレンドを生み出す「共創プロモーション」に取り組んでいる。

旅行業と接点多い~台湾市場

 台湾からの訪日旅行者数は、今年上半期で前年同期比6・1%増の229万人。復興航空の解散などの影響で上半期の日台間の航空座席供給数は8%減だが、搭乗率は高く、旅行会社にとっては団体旅行向けの座席の確保条件は悪化。それを補う形でチャーター便が運航され、地方への送客につながっている。クルーズ船の訪日客数も増加している。

 訪日観光の形態は、団体旅行が依然として約3割に上り、韓国や香港の約1割に比べると多い。出発前に役立った情報源でも「旅行会社のホームページ」が26%、旅行の申し込み方法も旅行会社の店頭が約4割。台湾交流協会台北事務所経済部主任の中杉元氏は「個人旅行化、オンライン化が進む中でも、旅行会社との接点が依然大きい」と指摘する。

 観光庁の16年宿泊旅行統計調査によると、台湾が外国人宿泊者の中で最も多いという都道府県は20県。前年に対する伸び率の上位5位は茨城県、秋田県、山口県、岡山県、青森県が占めた。伸びている地方の共通点として、(1)航空路線の就航(定期便、チャーター便)(2)周遊客の取り込み(LCC、交通パスの充実で広域化)(3)ブランド構築(食や自然の活用)―などを挙げた。

 
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