【観光業界人インタビュー】日本ホテル協会 志村康洋会長


日本ホテル協会の重点事業

東京2020オリパラに協力 人手不足の問題も対応

 ──3月の春季総会で会長に就任し半年。会長方針として進めていることは。

 「日本ホテル協会は1909年、観光業の発展と我が国の国際的な地位向上に資するという目的から設立された。以来108年、今もこの使命は変わっていない。むしろ最近、訪日外国人客が大幅に増加し、また2020年には東京オリンピック・パラリンピックを控えて、業界への社会からの要請や期待はかつてないほど高まっている。同時に、IT化の進展や需要の多様化、労働人口の急激な減少といった社会やマーケットが構造的に変化している中で、会員に共通するさまざまな課題や問題に真摯に向き合って会員に寄与していけるよう全力で取り組む。会長になって以来、そう思いながらやっている」

 ──現在のホテル業を取り巻く経営環境をどう認識している。

 「政府が『明日の日本を支える観光ビジョン』を掲げ、観光産業を成長戦略の柱の一つに位置付け、さまざまな施策に取り組んでいる。その効果に加え、円高の是正やアジア新興国の経済発展なども重なって訪日外国人数が急増している。昨年度は前年対比21.8%増の2403万人だ。ここ数年、ホテル業界には強い追い風が吹いている。とはいえ、クルーズや民泊の増加、新規ホテルの相次ぐ開業により部屋の供給量が拡大していることもあって、現在の客室稼働の伸びは踊り場の状況にある。今後、供給量を上回る訪日外国人旅行客の伸びに期待している」

 「追い風の一方でいろいろなリスクがある。ホテル業は自然災害や地政学的なリスク、急激な為替変動、経済危機などにより、経営に大きな影響を受けやすい業態だ。また、現在、喫緊の課題として労働力不足の問題はさらに顕在化をしていくだろう。人件費の上昇リスクが拡大すると予想される」

 ──日本ホテル協会の重点事業は。

 「まずは20年の東京オリンピック・パラリンピックへの対応だ。協会の中には10の委員会がある。その中で主に『2020オリンピック・パラリンピック受入委員会』『インバウンド推進委員会』と『社会福祉委員会』の場で対応を進めている。大会組織委員会からの要請を受けて会員ホテルから出向者も出している。今後、東京オリンピック・パラリンピックの成功に向けて、できる限りの協力をしていきたい」

 「そのほか主なものとして、人手不足の問題。嘆いていても始まらないので、むしろ運営の効率化や生産性向上へいろいろ手を打っていくチャンスだと前向きにとらえていきたい。人材育成については、セミナーや研修事業を充実させて継続していく。地道なことを着々とやる一方で、デジタルテクノロジー活用への期待も大きい。技術や機械で補えるのであれば補って、生じた余力を人でしかできないことに振り向けて、おもてなしを一層充実させたい」

 「低酸素社会の実現への取り組みでは、先般開始したホテル業の『ベンチマーク制度』(省エネ状況評価)を着実に進める。そのほか、安全・安心、防災・減災や防犯の問題、食品ロス対策やユニバーサルデザインの推進、受動喫煙防止対策など、どれも重要な課題だと受け止めている。これらの課題については、10の委員会で活発に議論し対応を検討していきたい。また、12支部との情報共有、さらには行政への働きかけや提言、他の関係団体との連携などにより最善の道を探っていきたい」

──増加する訪日インバウンドの受け入れに関する取り組みは。

 「考え方として大切なのは、東京オリンピック・パラリンピックがゴールではないこと。むしろ、オリンピック後に焦点を当てて、私たちが今何をしていくのかだ。お客さまを安全・安心、快適に迎えるためにハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアに磨きをかけて、『日本のファン』を増やして、リピーターとなってもらえるよう一層努力していかなければならない。会員ホテルはみんなコンセプトが違うので、協会としては、各ホテルの特徴を発信するポータル機能の一層の強化に取り組んでいきたい。こういったことで世界の国際都市や観光地との競争に勝てる態勢を整える」

──住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月9日に成立した。民泊をどう考える。

 「協会としては、有料で宿泊場所を提供する以上は利用者の安全・安心と公衆衛生の確保を基本として、近隣住民の日常生活に不平や不満が生じることのないように適切な処置を講じるということを要望してきた。18年にも住宅宿泊事業法が施行されるが、問題は、法律上のルールが正しく守られていくこと、また、行政が営業実態を正確に把握することができるかが『鍵』となる。ホテル市場への影響は少なからずあると思われるが、やる以上は健全な運営が行われることを期待したい」

【しむら・やすひろ】

【聞き手・板津昌義】

 
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