【観光業界人インタビュー】ニトリホールディングス 似鳥昭雄会長


北海道の観光振興に向けて

小樽芸術村、9月に開業 「札幌観光」の考えで集客

 今年9月、小樽市に「小樽芸術村」をグランドオープンする、家具・インテリア製造小売り最大手のニトリホールディングス。似鳥昭雄会長に芸術村開設の狙いと北海道の観光に対する思いを聞いた。(インタビューは7月下旬に実施)

 ──23歳の時に札幌で家具店を立ち上げた時は30坪の店で、1階が家具売り場、2階が住居の個人商店だったと本に書かれています。それが今や日本を代表する流通業です。

 「ここまでなれたのも北海道の皆さんが買ってくれたから。その恩返しをしたいと常々思っていた。これまで『北海道応援基金』や『公益財団法人似鳥国際奨学財団』などを設立してきたが、今回の芸術村も北海道への社会貢献(企業メセナ活動)との位置づけ。経営に役立てることは考えていない」

 ──小樽にした理由は何でしょう。

 「当初は札幌でと思っていたが適当な場所が見つからなかった。そのうち小樽にいい物件があると聞き見に行った。旧三井銀行小樽支店、旧高橋倉庫、旧荒田商会など素晴らしい建築物が使えるとあって、ここだと決めた。小樽運河にも近く、場所もすこぶるいい」

 ──昨年7月に2館が先行オープンしました。内容は。

 「旧高橋倉庫を『ステンドグラス美術館』、旧荒田商会を『アール・ヌーヴォーグラス館』として7月23日に開業した」

 「ステンドグラス美術館には19世紀末から20世紀初めにイギリスで作られたステンドグラス70組140点、アール・ヌーヴォーグラス館にはガラス作家のエミール・ガレの作品など約100点を展示した」

 ──来館者数はどのくらいですか。

 「1年で10万人強入った。小樽にある施設の中では1番の来館者数だ。ちなみに2位は小樽水族館、3位は運河だった。本物の良さを理解してもらうため、両施設では音声ガイドを無料にしている」

 ──今後の予定はどうなっていますか。

 「8月1日から旧三井銀行小樽支店を小樽を代表する歴史的建造物の一つとして公開する。さらに、9月1日には旧北海道拓殖銀行小樽支店を修復し、アール・ヌーヴォー・アールデコのグラス類と所蔵する絵画・彫刻を一堂に集め、『似鳥美術館』として公開する。旧荒田商会は『小樽芸術村ミュージアムショップ』となる。9月1日をもって小樽芸術村のグランドオープンとなり、将来的には小樽を代表する名所として、年間30万人を集める施設にしたい」

 「年2回程度特別展を開催し、所蔵する浮世絵や版画なども展示したい。また、500坪ほどある中庭には芝生をはり、観光客や市民の憩いの場とする。小樽には緑も少ないので、いいアクセントになるのではないか」

 「グランドオープンを機に芸術村のPRにも一段と力を入れていく。やる以上は日本一の施設を目指す。芸術村を通して、北海道のさらなる観光振興に寄与したい」

 ──北海道でも訪日外国人観光客が増えています。芸術村の対応はいかがでしょう。

 「まずは音声ガイドの充実が不可欠だ。英語、中国語、韓国語で案内ができるようにする。ガイドがないと半分しか良さが理解できないため、早急に対応する」

 「外国人の受け入れの最大の問題は言葉だ。解消するには通訳ガイドをもっと増やす必要がある。全く足りない。外国語をしゃべれるシニアをもっと活用すべきだ。われわれもボランティアガイドの募集を始める考えだ」

 ──小樽の観光を活性化させるには何が必要でしょうか。

 「私は札幌と小樽が一体になって観光振興を図るべきだと思う。つまり『札樽(さっそん)観光』だ。複数の周遊ルートを作り、観光客に提案してはどうかと両市長にも話している。両市は知名度こそあるが、観光資源は多いとはいえない。単独での集客には限界もあり、足並みをそろえて観光客を呼び込む努力をすべきだ。北海道観光全般に言えることだが、素材に頼り過ぎて工夫が足りない。観光に携わる人はもっと知恵を出し合うべきだと思う」

【にとり・あきお】
北海学園大卒。1967年似鳥家具店を札幌で創業。85年に社名をニトリに変更、札幌商工会議所副会頭など公職多数。1944年樺太(サハリン)生まれ、73歳。

【聞き手・内井高弘】

 
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