【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 405】高利益体質に改善する業態戦略 その4 青木康弘 


 前回に引き続き、中規模旅館・ホテルがさまざまな業態戦略をとった時の損益シミュレーション結果を示しながら、どの戦略が高利益体質につながるのか説明しよう。

 8、インバウンド向け都市型旅館・ホテル戦略

 都市部(地方都市・観光地含む)でインバウンド(海外ツアー、FIT両方)を主なターゲットとした旅館・ホテルを展開するという戦略である。

 既存の中規模旅館・ホテルの収益アップを図ることが難しければ、都市部に別コンセプトの旅館・ホテルを新設して、運営に関するノウハウ、人材、仕入れなどのシナジー効果を狙うというのも良いだろう。

 都市部の出店を想定して、総投資24億円(容積率600%、建ぺい率80%、敷地面積150坪、坪単価600万円、延べ床面積千坪、1室あたり面積20平方メートル)とする。客室数100室、1泊2食9500円、1室あたり宿泊者数2人、客室稼働率80%の旅館・ホテルがこの戦略をとった場合の償却前利益は約2億円、借入返済後の収支は約6千万円と高利益が期待できる。

 都市部への出店は一見すると投資負担が重いため、地方に出店するよりも採算が悪化するように思われるが、実際には1泊2食9500円でも十分成り立つことが分かるだろう。

 ただし、このような旅館・ホテルの開発で注意したいのが、1室あたり面積の設定である。先ほどの試算は1室あたり20平方メートルの設定だったが、少し余裕を持たせて25平方メートルとした場合の収支はどうなるだろうか。

 試算では、総投資が30億円と増加するにも関わらず償却前利益は約1億8千万円に減少し、借入返済後の収支は約800万円と大幅に減少することが想定される。同様に1室あたり30平方メートルとした場合の総投資は36億円と増加するにも関わらず償却前利益は約1億6千万円、借入返済後の収支は△4千万円と想定され、事業として成り立たないことが想定される。

 このように、1室あたり面積の設定次第で、事業収支は大きく異なる。開業してから後悔しないように、1室あたり面積(≒1室あたり投資)と客室単価・客室稼働率(≒1室あたり利益)のバランスは慎重に検討することをお勧めする。

 今回もエクセルで作成した業態別損益シミュレーションを読者サービスとして無料でご提供する。送付を希望される方は、aokiy@y-bc.co.jpまで「業態別損益シミュレーション希望」とタイトルをつけてメールを送ってほしい。

 (山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)

 
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