【日本政府観光局インバウンド最新リポート23】急成長のフィリピン市場 JNTOバンコク事務所 金城友紀次長


高い訪日意欲 情報は不足

 2016年の訪日外国人は、過去最高の前年比21・8%増の2403万9千人を記録した。インバウンドの動きはここ数年大きく注目され、自治体、企業などの国内インバウンド関係者による各国でのプロモーション活動も多様化してきている。

 フィリピンについても例に漏れず、16年の訪日客数は前年比29・6%増の34万7800人を記録した。フィリピンにおける訪日旅行のピークシーズンは年に2回、春のホーリーウイーク(聖週間)と12月のクリスマス休暇の時期であるが、16年では、クリスマス休暇前の10月の時点で、すでに前年の訪日客数を超える勢いであった。

 14年の査証緩和を皮切りに多くの現地旅行会社が訪日旅行商品の造成に注力し、特にここ1年ではLCC(格安航空会社)を中心にフィリピンと日本を結ぶ航空ネットワークも充実してきている。現地で開催される旅行博では訪日旅行商品が多く販売され、17年1月現在ではフィリピンの主要都市であるマニラとセブから成田、羽田、関西、中部、福岡といった地方を含む日本の主要空港に直航便が週150便以上運航している。

 16年の年末には、北海道と熊本へのチャーター便が運航されており、定番の東京や大阪以外の目的地の開拓も積極的に行われている。

 これらの好要因に後押しされ、順風満帆に見えるフィリピン人向け訪日プロモーションだが、これだけ訪日ブームが盛り上がっているにも関わらず、フィリピン人の間では日本の観光スポット名やコンテンツは認識されているものの、実際に訪問する際に必要となる情報が十分に行き渡っていないという側面も見えてきている。

 JNTOでは、16年にマニラにおいて3回の旅行博に出展し、日本の観光情報の発信に努めたが、ブースを訪れる人の多くは「桜が見られる時期はいつか」「東京からUSJへは日帰りで行くことができるか」「北海道に行きたいが、どうやって行けばよいか」など基本的な質問が多く寄せられた。

 訪日意欲が高まり、訪日旅行へのハードルも下がっている一方で、実際に日本に旅行するために必要な情報が不足するというギャップが生じていたのである。現地の旅行会社や航空会社の日本担当者と話をしてみても、訪日商品は人気のため、さらにプロモーションを進めて幅を広げたいが、PRのためのノウハウが追いつかないという声が聞こえてきた。

 こういった状況の中で、われわれインバウンド関係者がフィリピン市場向けに取り組むべき課題は、漠然と定着している日本のイメージに実用的な知識を追いつかせるということではないだろうか。その中で、日本人にとってはあまりにも当然のこととして省いてしまいそうな基本情報(季節と見所の関係性や地理、アクセスについてなど)も根気良く発信し続けることを忘れてはいけない。

 JNTOでは今後新たにマニラ事務所の設立を予定しており、インバウンド関係の皆さまとより緊密に連携し、フィリピンにおける訪日プロモーション活動を強化していきたい。

170225h

 
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