工学博士の内藤耕氏、旅館の労働生産性向上で講演


講演した内藤耕氏

 日本旅館協会(針谷了会長)は2月23日、旅館業の生産性向上に関するセミナーを見本市「国際ホテル・レストラン・ショー」の中で開催した。サービス産業革新推進機構代表理事で工学博士の内藤耕氏が「旅館業の労働生産性の革新的実践方法」と題し、「現場作業」にテーマを絞って講演。内藤氏は、顧客が求めているサービスを求められているタイミングで提供できるように作業プロセスを再構築すれば、リードタイム(準備・段取り時間)の短縮や在庫の削減が実現でき、労働生産性は向上すると訴えた。

 現場での実践に向けては、繁閑の差に伴って、繁忙期には作業負荷が集中し、閑散期には設備やスタッフが過剰能力になって固定費が上昇するため、「平準化」を目標に、作業を均等に配分して柔軟なプロセスに再構築する必要性を指摘。平準化の手法として「小ロット化」と「マルチプロセス化」を提案した。

 作業の小ロット化では、「計画的にまとめてやることが効率的」という発想に疑問を投げかけた。リードタイムを短縮し、作業を小刻み、小まめにした方が、作業時間は短く、スタッフの集中力は高まってミスが減り、顧客の要望にも対応しやすいと指摘。

 事例として、高稼働時に食事処で夕食を宿泊客に提供する際の準備、調理、配膳、下膳などについて説明。食事処への来場時刻の分散、出来立ての料理の提供、小まめな配膳による顧客接点の増加、小まめな下膳による食器洗浄の省力化など、作業の小ロット化の利点を強調した。

 小ロット化は、在庫の削減やロスの削減、大量仕入れの回避、需要変動への柔軟な対応、スペースの有効活用などをもたらすことも解説。「納期の短縮とサービスのバリエーション・アップで顧客に個別対応でき、高付加価値化がよりリアルタイムに実現できる」。

 作業のマルチプロセス化は、スタッフの多能工化と適切な配置を意味する。「繁忙期にはそれぞれの作業を選任化し、逆に閑散期には複数の作業を受け持てるようにすることで、稼働の変動に対して作業プロセスを柔軟化できる」。オフ期や利用客の少ない時間帯など、低稼働時の取り組みが生産性向上には重要になると指摘した。

 現場作業の平準化を目指して小ロット化、マルチプロセス化を推進した結果、「スタッフや情報、商品・材料、客が現場で入り乱れることなく、それぞれの作業がきちんとすき間なく、連結された状態」となる「整流化」が実現できると言う。

 内藤氏は、現場作業の改善の方向性を「お客さまに近づくこと」と強調し、「リアルタイム・サービス法」と呼ぶ。作業の整流化によってリードタイム短縮、在庫削減、サービスの品質向上などが実現することで、「全ての作業プロセスの『位置』『時間』『情報』が、顧客がいる最終工程に近づく」と説明した。

 今回は現場作業の改善にテーマを絞ったが、労働生産性の向上には、営業・集客、管理会計、評価の仕組みなどを併せて考える必要があると指摘。また、政府が推進する「働き方改革」などの状況を踏まえて、スタッフの給与、労働時間、休暇などを改善するためにも労働生産性の向上が不可欠と訴えた。

講演した内藤耕氏

 
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