家族の一員になる民泊、最初の体験
南信州は中央・南両アルプスの間に天竜川が流れる巨大な谷であります。気候は信州地方では最も温暖であり、そこに住む人々の気質は大変穏やかなことが特徴です。当地域では、飯田市が１９９６年から体験教育旅行の受け入れに取り組み、２００１年に地元自治体と企業、団体が出資し、ほんもの体験を切り口として誘客を図り、地域の価値を高め、地域振興に寄与する組織として当社が設立されました。体験プログラムは自然、環境、農業、味覚、伝統工芸、アウトドアスポーツなどさまざまな分野があり、種目数は１８０種目を数えております。
私どもはそのコンセプトとして、地域に暮らす人々がインストラクターとして体験プログラムに関わり、生徒たちを生産の現場、生活の中へ受け入れ、これまで培ってきた技術や経験をそのまま体験させることが本物の体験であるとの理念を持って取り組んできました。その理念は事業開始から２０年以上が経過した今でも、私どもの事業運営の拠り所として色あせることなく輝きを放っており、協力いただいている地域の人々もそのことに共鳴して継続的に関わっています。このほんもの体験の理念は、アクティブラーニングの視点を持って体験に臨んだ際に、さらに輝きを増すものとなります。
９８年に全国に先駆けて受け入れを開始した農家民泊を例に取れば、異なる地域に暮らす人の生活を知り、考え方に触れ、想像していた農業や田舎の暮らしと実際に体験して感じたこととの違いに気付くことが、大きな意味を持って「主体的な学び」や「対話的な学び」につながります。
また、受け入れ農家には単一作目の農家はほとんどおらず、果樹、稲作、野菜の複合経営が大半であり、果樹においてもリンゴ、梨、干し柿など、野菜は葉物、根菜、夏野菜などの少量多品目による営農をしている農家の割合が高いのですが、これは中山間地の地形により、そうせざるを得なかった側面もあります。こうしたことを実際に人に接し、体験や交流を通じて知ることにより、対話的な学びから深い学びへとつながる道筋が見えてくるものと思います。
天竜川でのラフティングは国内最大級の１回に３００人の実施が可能であり、フォレストアドベンチャー松川、乗馬、渓流釣り、マウンテンバイクなどの本格的なアウトドアスポーツ体験や、プロの職人に教わる陶芸や草木染めといった工芸体験、地域の食文化に触れるそば打ちや五平餅作りなど、民泊以外にも数多くの体験プログラムを行うことができます。
また、「満蒙開拓平和記念館」では語り部講話と展示見学による平和学習も行えます。温泉旅館も数多くありますが、「大平宿」では空民家で囲炉裏と竈を使った昔ながらの生活を体験でき、さまざまな形態での教育旅行の受け入れが可能です。
