【道標 経営のヒント91】お客さまツールに託す役割 宮坂登


 今回はお客さまが滞在時に参考にしたり、使用するツールのあり方を考えてみたい。

 客室内で多く見かけるのが、パウチされた館内施設の案内。どうしても安っぽさがぬぐえない。前回述べたようにお客さまが手に取る頻度に比例してへたりが早いものだけに、使い古したものが置かれているとひどくイメージが悪い。無いよりまし、と思ってみている。10枚ほどのパウチチラシをリング金具でまとめてあるものを見ると、もうさわる気にもなれない。雑多なものというイメージだ。

 宿泊料金の問題はあるだろうが、お客さまはネットなどで宿の情報を知り、いい宿だと感じるからこそ来館される。変なツールがあると、それだけで宿のイメージを損なう。リピーターなどには絶対なり得ない。

 あえて言わせていただくと、館内のあちこちにパウチで作った案内サインなどがベタベタ貼られていると興ざめである。場当たり的に作って貼り出すから、既存サインのデザインや書体の統一感がないし、空間のイメージを大きく損ねてしまっている。館内案内をするなら、チェックイン時に渡すツールとしてカードスタイルの案内シートを渡せばいいと思うし、取引先でも採用してもらっている。

 和風の宿では、客室に和の空間とマッチする文箱を置くことも提案している。その都度の補填が面倒くさいという宿もあるが、ふたを開けるとメモ用紙、便箋、ペン、筆ペン、封筒、裁縫セットなどが整然と並べられており、使わずともイメージが良い。「行き届いた」イメージの有無が、宿のもてなしのイメージを大きく左右するからだ。

 個室食事処でも考え方ひとつでサービスを変えられる。例えば、膳紙。

 着席してから飲物をオーダーする。そこから料理が出始めるまでのわずかな時間をどのように演出するか。採用してもらっているアイデアは、その宿の歴史や施設、女将の話、施設、などについての一話完結のエピソードが刷り込まれた膳紙をテーブルに置き、料理が運ばれ始めるまでの時間に読んでいただき、その宿の雰囲気に浸ってもらう仕掛けだ。

 ある宿ではあらかじめ十数種の膳紙原稿を用意しておき、そのテーブルに座るお客さまに応じて使い分けている。原稿を作っておけば必要枚数だけ出力するだけ。紙のロスもない。朝食時には夕食時のものとは別の膳紙を用意。チェックアウトしてから立ち寄れる身近な観光スポットの案内なども好評のようだ。

 工夫すれば、ツールひとつでおもてなしのイメージを変えられる。考えてみてはいかがだろうか。

 
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