【竹内美樹の口福のおすそわけ202】馬刺し 竹内美樹

  • 2017年11月14日

馬刺し(和こう)

 日本では昔から、貴重な蛋白源として馬肉を食す文化がある。熊本が有名だが、長野、青森、福島、山梨なども、馬肉消費地域だ。

 馬肉と聞くと、ちょっぴり引いてしまう人も多いだろう。だが、実はとても優れた食材なのだ。まずはその栄養価。低カロリー、低脂肪で高タンパク。鉄分やカルシウムが豊富な上、グリコーゲンという重要なエネルギー源が牛肉の3倍以上含まれているそう。馬肉を食べると体が温まるのは、そのせいだろう。

 オマケに、とても安心・安全だ。どうして馬刺しはOKで牛刺しはNGなの?と言っているそこのアナタ! O157に代表される病原性大腸菌は、牛や羊、鹿など反芻動物の腸内に生息しており、反芻動物でない馬の腸には住まないから、生食が可能というワケ。また、狂牛病として知られるBSEや羊、鹿に見られる同様の病気TSEとも、馬は無縁だ。そして牛、豚、鹿、山羊、猪など蹄が偶数の偶蹄類の動物が罹る口蹄疫にも、蹄が奇数の奇蹄類に属する馬は感染しない。

 もう一つ、馬は他の家畜に比べて体温が高いため、寄生虫や雑菌が付きにくいのだそう。さらに牛、豚、鶏はアレルギー表示が推奨されているが、馬は表示の必要がない。アレルギーを起こしにくい食肉なのだ。

 さて、馬肉の良さを並べてみたが、そんな面倒なことより、大事なのはおいしいかどうかだ。山梨県韮崎市にある甲州牛の店「和こう」では、ムチャクチャ美味な馬刺しがいただける。サスガ肉のプロだけあって、向山和夫社長が選ぶ馬肉は最上級。キレイにサシが入ったそれを、おろしニンニクとショウガと小口切りの葱と一緒に、お醤油にちょっぴりつけて食せば、うぅ~ん、とろける! 肉の旨味と共に上質な脂の甘味が口の中に広がる。脂肪分の少ない馬肉だが、脂の融点が低いので口解けが良い。しかもこの脂、悪玉コレステロールをやっつける不飽和脂肪酸が豊富というからうれしい。

 長野県白馬村の宿「五龍館」で馬刺しをいただいた時、真っ白なモノが盛り合わせられていた。これはタテガミという馬肉特有の希少部位。首の鬣(たてがみ)の下にある皮下脂肪だそうで、不飽和脂肪酸とコラーゲンの塊だ。プリップリで甘いそれを赤身の肉で巻いて食べれば、まさに口福!

 桜肉と呼ばれるようになったのは、赤く美しい肉の色からとも言われるが、諸説ある。獣肉を食すことが禁じられていた江戸時代、それでも食べたいと、お役人にバレないように隠語を使った。猪はボタン、鹿はモミジで馬はサクラだ。また、千葉県の佐倉に幕府の牧場があり、良い馬がそろっていたため「馬と言えば佐倉(さくら)」と呼ばれるようになったとか。

 世界一のレストランと称される、デンマークの「noma」のレネ・レゼピシェフも、日本滞在中最もおいしいと思ったのが馬肉だったそう。何となく先入観で避けている方、ぜひ一度味わっていただきたい。ウマイことウケアイだ!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。


馬刺し(小作)


馬刺し(和こう)

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