【旅館はもっと良くなるべきだ 旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 59】業務効率化への取り組み26 佐野洋一

  • 2017年10月12日

 (25)多能化を実現する要件(続き)

 前回に続き、このテーマについて述べる。

 (ⅳ)研修(訓練指導)

 研修といっても、ほとんどの場合、講義や演習など行う必要はなく、「現場で仕事を通じて」でよい。前回お伝えした(ⅰ)習得業務の範囲決め、(ⅱ)指導項目の明確化、(ⅲ)マニュアルの用意、ができていれば、やり方もさして難しいことはない。

 強いて言うなら「研修をきちんと行うこと」である。昨今はどこの旅館も、その日その時間の業務に必要な人数だけが割り当てられているので、その中で業務以外のこと(教える)をやろうとすると無理がある。いきおい、「研修を省いていきなり業務」―ということになりがちで、これはかえって余分な時間がかかることになる。業務に就いてもらう前に、仕事の流れ、物のありか、使う用具、帳票類の見方や扱いなど、一通りのことを教えておくことが大切だ。

 だから、単純なことだが、要するに研修をやる「時間」と「指導担当者」をあらかじめきちんと設定すること、そしてその担当者に、教えられるだけの余裕を業務に持たせてあげることが肝要なのである。

 (ⅴ)履修項目の見える化

 他部署の人を応援要員として組み入れるには、「何ができるか」が分かる必要がある。そのためには、研修で習得済みの項目を、個人別に「見える化」しておくことだ。

 どうするか…イメージは自動車運転教習所の履修表である。その項目は、(ⅱ)で述べた指導項目リストをそのまま適用すればよい。

 そしてすでに教えた(習得した)項目に印を付けていく。この情報を本人、応援を受ける部署の責任者、シフト管理担当者などで共有するのである。

     ◇

 以上、多能化を実現するための五つの要件(手順)を挙げた。お気付きの方もあるかと思うが、このうち(ⅱ)から(ⅴ)は、新入社員や派遣社員の教育にも共通である。またこのようなステップで各部署を計画的に回らせれば、「オールラウンド・プレイヤー」の育成もそう難しいことではない。

 同じ「仕事を覚えさせる」でも、こうしたシステム的なやり方をするのとそうでないのとでは、効果、効率に大きな違いが出てくることがイメージしていただけたことと思う。

 次回は、多能化した人材を協力、応援態勢に組み入れる際の要件について考えていきたい。

 (株式会社リョケン代表取締役社長)

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