【体験型観光が日本を変える 56】チャンスへの準備 藤澤安良


 年末が迫って、慌ただしい日が続いており、心身の休まる暇がない毎日である。今年の訪日外国人の人数は、数週間で結果が出るが、2800万人になるであろう。2020年の4千万人という政府目標も東京オリンピック・パラリンピック開催年という特需を勘案すると、現実的な数字となってきた。消費額は政府目標の年間8兆円を達成するには、現在の1人当たり約15万円を20万円に引き上げる必要がある。

 洗濯機や洗浄式のトイレの便座を何個も購入する訪日外国人を見てから数年が経つ。そうした消費行動が再び主流とならない限り、別の消費が必要になる。言われ始めたのが「物」消費から「事」消費への転換である。つまりは、物見遊山の見る観光から、体験型観光への転換に他ならない。豊かな自然を活用したアウトドア・アクティビティが脚光を浴びることになる。

 バリ島でのラフティングに参加したが、世界中の国から午前の回に数百人が参加する。インストラクターの言語の違いで振り分けられ、日本語が話せるインストラクターには当たり前だが、日本人ばかりとなり、英語を話すインストラクターには、いくつもの国の人が集まることになる。

 今年10月には、徳島県三好市の吉野川でラフティングの世界大会が日本で初めて開催され、20数カ国から500人以上の選手が参加した。日本の自然の素晴らしさは間違いないが、危険が伴うアウトドアは安全管理が重要である。インストラクターの力量は当然ながら、言語についても意思疎通が図られなければ危険が回避できないことからも、語学力が求められることになる。

 日本人、とりわけ若い人たちに語学を学んでもらい、国際観光分野に大いに参画してほしいものである。さもなければ、日本語を学んでいる外国人の若者は極めて多く、日本のフィールドを使ったあらゆる観光分野のインストラクターも、ガイドも、外国人が担うことになってしまう。

 隣国客を乗せる白タクが日本で問題になっている。軒下を貸したつもりが母屋までとられることになる。つまりは、観光産業が発展しても日本人の職場でなく、外国人の職場が増えて、稼いだ外貨を外国に逆流させてしまうことになる。宿泊施設も、京都では2020年に1万室が不足するというデータがあり、新たに500室の大型ホテルが20軒も必要になる換算だ。おのずから近隣市町村にチャンスがあるが、受け入れ態勢が課題である。

 外国人旅行者には、ゴールデンルートから離れる流れが起きるはずである。日本の多くの田舎にチャンスがあるが、それに向かって準備と行動が必要になる。

 過日、ある地域で外国人などを旅館業法の許可がないままに泊めて代金を取っているという自称ゲストハウスや、農山漁村での民家ステイなどでなく、民泊と称して違法に人を泊めているケースなどについての話を聞いた。変化が激しいマーケットの動向に態勢整備が追いついていない。早急な対応が求められている。

 
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