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観光業界人インタビュー 第2947号≪2018年7月14日(木)発行≫掲載
HACCP対応で手引書
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全旅連シルバースター部会
中村 実彦氏


 高齢者や障害者など、誰もが安心して宿泊できる宿の普及を目指す全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)のシルバースター部会。昨年、部会長に就任、今年2年目を迎えた中村実彦氏(長野県白馬・五龍館)に部会の事業方針を聞いた。

──昨年の部会長就任時、「ヘルスツーリズム」をテーマに事業を進めると述べた。

 「さまざまな形のツーリズムにスポットが当たる中、『湯治』と『健康』を組み合わせたヘルスツーリズムについて、昨年1年間調査、研究を進めた。その成果として、『湯治とヘルスツーリズム〜インバウンドに対応するツーリズムの可能性』と題する冊子を作成し、今年3月、シルバースター登録施設と、都道府県旅館ホテル組合を通じて全国の組合員施設に配布した」

 「冊子では二つの事例を取り上げている。一つは群馬県四万温泉で、内容は湯治と食事療法のヘルスツーリズム。地元の温泉協会が秤(はかり)メーカーのタニタと連携して、1泊2日や2泊3日の『プチ湯治』を企画。タニタの器具を使った健康チェックや温泉街のウォーキング、ヘルシー懐石料理などのメニューを健康志向の女性、シニアらに提供した」

 「もう一つは長野県鹿教湯温泉の湯治と運動のヘルスツーリズム。同温泉の斎藤ホテルが近隣の病院と提携し、脳ドックの受診者やリハビリを行う人を対象に、トレーナーの指導による健康体操を行うほか、ジム、温泉プールなどホテルの施設を使った各種プログラムを提供している。こちらも好評で、平均滞在日数約2.5泊という宿泊実績を生んでいる」

 「外国人観光客が急増し、都市から地方へ旅先も移りつつあるが、地方の温泉・観光地はまだまだ厳しい。ほかの地域との差別化や、地域内での連携が集客のポイントといえる。今回の二つの事例が、よい参考になるのではないか」

──今年度の事業の柱は。
 
 「一つはHACCP(ハサップ)対策。食品衛生法が改正され、旅館・ホテルを含めた食品を扱う事業者は、その管理にHACCPの考え方を取り入れなければならなくなる。法律の施行は公布日から2年以内で、東京オリンピック・パラリンピック開催直前の2020年6月13日までに施行される」

 「大きい施設ならともかく、小規模の旅館・ホテルでは、何をしたらいいのか分からないところもあるだろう。部会では今年度事業として、日本食品衛生協会などと連携して、旅館・ホテル向けのHACCP対応手引書を作成する。来年3月までに完成させ、シルバースター登録施設を含めた全国の旅館・ホテルに配布したい」

 「『ユニバーサルツーリズム』についても研究したい。誰もが気兼ねなく参加できるユニバーサルツーリズムを観光庁が推進している。東京オリ・パラを控え、その機運が一層高まっている。その推進が先進国のあるべき姿ぐらいに捉えられている。受け入れ側としても、体制をしっかりと整えなければならない」

──部会が推進するシルバースター登録制度と、登録のメリットについて。

 「ソフトやハードなど、『全ての人に優しい』という観点で一定の基準をクリアした宿を審査の上、登録している。現在は全国に約800軒。ピーク時は千軒を超えたが、廃業などで数が減っている」

 「登録のメリットは、一つは全旅連の情報が本部から直に伝わること。会報やさまざまな有益情報が都道府県旅館ホテル組合を経由せず、直接送られる。OTAの楽天トラベルがシルバースターの特設ページを設けており、年間数十億円を売り上げている。この集客効果も大きい」

──登録施設数の当面の目標は。

 「再びの千軒超えを目指す。同業者へメリットのアピールを行うほか、登録申請を行う際の手続きも、より簡単に行えるよう検討したい」

──スキー選手として活躍し(1982年アルペンスキーワールドカップのアルペンコンバインド競技で6位)、この冬の平昌パラリンピックではアルペンスキーの監督を務めた。その時のエピソードなど。

 「選手村から競技会場に選手を送るのが大変だった。車いすを積めるバスの台数が限られており、待っていては選手のストレスになるので、われわれスタッフが車を運転して片道60〜70キロを往復した。選手村はそれなりの設備だったが、食堂までに急角度のスロープがあり、車いすでは大変だった。肝心の成績だが、女子は村岡桃佳選手が出場全種目でメダルを取り、本堂杏実選手はスキーを始めて2年目だが8位に入賞した。男子は森井大輝選手が銀メダルを取ったが、メダルはその1個だけだった。前回のソチに比べて女子は満足だが、男子は惨敗(笑い)。4年後の北京に向けて既に始動しているところだ」

【聞き手・森田淳】


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