国際観光旅館連盟(佐藤義正会長、1169会員)は17日までに全会員を対象にした休暇分散化に関するアンケート調査の集計結果をまとめた。政府の観光立国推進本部で提示されている春のゴールデンウイーク(GW)の分散化と秋の大型連休の創出の具体案について、春、秋合わせて賛否を聞いた結果、「反対」が43.6%、「賛成」が29.9%、「どちらとも言えない」が26.5%だった。質問対象の具体案は最終案ではなく、観光庁などが地方の意見などを聞きながらさまざまな手法を検討中だが、調査結果では賛否が分かれるとともに、期待と不安が入り混じる意見が多く寄せられた。
休暇分散化のアンケート調査は、国観連の旅行需要検討専門委員会(岡崎彌平治委員長)が実施した。4月12日に質問票を発送し、422軒からファクスで回答を得た。国観連では、寄せられた意見とともに集計結果を会員の声として観光庁に提出した。
■競争激化を危ぐ
全体の約4割に達した反対の理由(選択式、複数回答)は、「地域間競争が激しくなり、今以上に有名観光地などの地域に集中する」が51.1%、「有給休暇を取りやすくする施策を進めることが先決」が40.2%、「各地域には伝統と歴史のあるさまざまなイベントがあり、すでに開催日が固定され、全国から多くの来客を受け入れている」が39.1%、「土・日曜日を合わせて5連休になると、海外旅行が多くなることが懸念される」が24.5%だった。
このほかにも、「生産性や雇用問題のメリットだけを考えてこのような施策を実施してよいのか。日本固有の文化や習慣はどうなるのか」といった祝日の意義や文化的な側面を反対理由に挙げる旅館も複数あった。
■活性化を歓迎
約3割に上る賛成の回答理由(同)は、「観光地の混雑や道路渋滞が緩和される」が83.3%、「遠距離観光がスムーズになり、国内観光の需要増が予測される」が61.1%、「旅行先の選択肢が広がる」が28.6%。
ピーク需要の分散に伴う旅館経営上のメリットを挙げる意見も多い。「機会損失が減り、稼働率が上がる可能性がある」「平日と休日の差が少しでも平準化されれば、雇用の確保、食材の調達などがしやすくなる」「お客さまには料金の低廉化などのメリットがあり、宿泊施設としてもトータルでメリットが多いように思う」などの指摘があった。
■集客は工夫次第
旅行需要が増大し、観光産業の生産性向上、地域経済の活性化につながるとの期待の一方で、地域間や宿泊施設間の“優勝劣敗”が鮮明になり、淘汰が進み、格差が広がるのではないかという声も多かった。具体案に反対の旅館だけでなく、賛成の旅館にも同様の懸念はあった。
「人気の高い観光地や宿泊施設に集中し、将来的には地域の衰退を招く」「東京ディズニーランドや大型イベントを開催している地域に集中する」などの不安だ。一方で推進を求める声として、「実施してみる価値がある。集客できるかどうかは個々の工夫次第」「不景気の中、新しいチャレンジが必要。デメリットは修正していけばいい」などがあった。
寄せられたコメントには、「春は賛成、秋は反対」またはその逆などの意見もあるほか、所在地域や業態によっても注目点が異なる。「当地は圏域内のお客さまが多いが、分散化してもこれが減るとは考えにくく、逆に需要の少なかった時期に他圏域からの集客の可能性が広がる」といった圏域内観光と地域別分散の関係に触れた指摘をはじめ、「修学旅行の時期はどうなるのか」など季節需要への影響を気にする声もあった。
このほかには料金設定に着目した意見が多かった。「ハイシーズン、オフシーズンの料金の差別ができなくなる」「地域別割引の実施が予想され、その結果、単価下落が起きる」「有名観光地以外での安売りが激しくなる」などの指摘があった。
今回の集計結果では、「どちらとも言えない」という回答が3割近くに上ったことも特徴的。「内需拡大や旅館の活性化につながるか分からない」「予測できない部分が多い」「全国民的な盛り上がりが必要」などの意見もあったことから、国観連では、今後も休暇分散化に関する政府内外の議論に注目していく考えだ。
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アンケート調査の質問対象は、観光立国推進本部の休暇分散化作業部会(3月3日開催)で提示された案。作業部会で示されたカレンダーを使った分散イメージ図(5つの地域ブロックの区割りを含む)の資料も添付し、「たたき台」の案であることを明記した上で回答を求めた。
この案は、GWの場合、憲法記念日、みどりの日、こどもの日を全国一律の休日ではない「記念日」に変更し、その分の休日を5つの地域ブロックに分散させて土・日曜と合わせて連休化するもの。秋の大型連休の場合は、「ハッピーマンデー」の海の日、敬老の日、体育の日を同様の手法で分散させ、大型連休を創設する手法となっている。