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 ■観光業界人インタビュー 第2450号≪2008年1月1日(火)発行≫掲載
サミットを契機に
道民が心をひとつに
観光魅力のさらなる向上へ


北海道知事
高橋はるみ氏

 今年7月7〜9日、北海道洞爺湖地域で先進国首脳会議(サミット)が開催される。日本の地方でサミットが開かれるのは00年の沖縄に次いで2回目。舞台となる北海道は、世界にその存在をアピールするまたとないチャンスとなる。ただ、景気低迷に伴う観光入り込みの伸び悩みなど、道政には課題が山積だ。難局にどう取り組むのか、高橋はるみ知事に聞いた。聞き手は本社顧問の石子彭培。

──今年7月には洞爺湖でサミットが開催され、北海道を世界にPRするまたとないチャンスだ。サミットを契機とした観光振興について、アクションプランを策定しているとのことだが、どのように取り組んでいこうとしているのか。
日本で行われるサミットが北海道洞爺湖で開催されるという政府の決定が昨年4月下旬にあった。それに伴い、道内の各界各層の団体が集まり「北海道洞爺湖サミット道民会議」を立ち上げた。道民会議を主体として様々な事業を展開し、道民あげてのおもてなしに取り組んでいる。

また、サミットを契機とした北海道・日本の観光振興を主なテーマとした国の「観光立国推進戦略会議」が昨年10月に洞爺湖で、また11月には東京の首相官邸で、それぞれ開催された。その会議では、観光プロモーションの促進、受入環境の整備、魅力発信の強化、環境と共生する観光の展開という4つの緊急提言がなされたが、道としても「観光情報の発信」「観光の魅力づくり」「おもてなし・受け入れ環境の整備」という3つの柱立てをして取り組んでいる。

「環境」が中心テーマとなる今回のサミットは、地球温暖化の進展など、世界規模での環境問題が取りざたされている中で、道民にとっても、身の回りの環境はもちろん、北海道の貴重な自然や生態系を考えるいい機会だ。

サミットを機会に道内外、世界の方々が北海道を訪問される。これを通じ、北海道の恵まれた自然環境や食、文化などの魅力を最大限に発信し起爆剤としたい。また、事前の取り組みを行うと同時にサミット終了後も視野に入れて継続的に様々な事業を展開し、「再び訪れたい」と思えるような北海道作りを道民が心をひとつにして取り組んでいきたい。


──サミット開催時は国内外から4千人程度の報道関係者が北海道に来られるため、大変なPRになるだろう。ぜひとも成功させるよう我々もできる限り協力したい。
よろしくお願いいたします。

──知事は、昨年、自ら台湾に行かれたと聞いている。また国内では東京や大阪でもトップセールスを行い、積極的に北海道観光をPRされてきたが、訪問先の反響はどのようなものか。
昨年は北海道から近距離にあり、経済成長が著しい東アジアの中でも台湾を訪問させていただいた。台湾の方々の観光旅行では北海道が一番人気のようであり、北海道の海外観光客59万人のうち、台湾からの観光客が26万8千人と最も多く、半分弱を占めているのが現状だ。中でも、リピーターの占める割合が多く、団体旅行よりも個人で動きたいというご要望が多くあった。それに合わせて、台湾の運転免許による日本国内での運転が昨年9月から解禁になった。今後は、レンタカーを利用した自由度の高い観光が期待できるということもあり、ドライブ観光の売り込みを中心に行ってきたところだ。まだまだ昨年からのスタートの段階であり、ドライブ観光としての実績はそれほど上がっていないが、これからはさらに増えることを期待しつつドライブ観光PRの追い込みをやっていきたいと考えている。

さらに引き続き東アジアをターゲットとしたプロモーションを積極的に行ったり、台湾や韓国での国際旅行博覧会への出展を考えている。

また、昨年11月には東京、大阪、そして名古屋で観光のトップセールスを行った。私が対応した東京・大阪では、今年度の新規事業として、「ゆとりツーリズム」を提案するため、旅行関係者へのプレゼンテーションや街頭PRなど集中キャンペーンを行ってきた。われわれのプロモーションは、ひとつはプロであるエージェントの方々に対するアピールと、もうひとつは駅に行って一般の住民の方々に対するアピールと、両方それぞれに地域ごとにやらせていただいた。いずれも、皆様の関心が極めて高く上々の反応を感じた。

こうした機会を通じて、大変多くの方に会うことができ、改めて北海道への人気の高さを直接肌で感じることができた。これからもできるだけこのようなトップセールスを行っていきたい。

──北海道はこれまで国内有数の観光地として人気も高く、今や観光産業は、北海道のリーディング産業へと成長しつつある。知事は、最近の北海道観光をどのようにとらえているか。
北海道の観光の素材はどれをとっても一流だ。自然景観もすばらしいし、食の素材も超一流である。また、温泉などそれ以外の観光資源も豊富だ。ところが、観光入り込み客はなかなか苦戦している現状である。分析してみると、外国人のお客様はどんどん増えており、道外の日本人のお客様も横ばいかまたは微増なのだが、問題は全体の観光入り込み客数の8割くらいを占めている道民の入り込み客数が、落ち込んでいることだ。その背景には北海道経済がいまだに厳しい状況ということもあるが、私は今一度、道民の方々に観光の分野における地産地消を意識してほしいと思っている。北海道は他県と比べても、全国22県分の広さがあるので、道内の方々がまだ行っていない道内の観光地がたくさんあると思う。そういった所にぜひ足を向けていただければ、北海道の観光振興になるし、また、北海道経済の活性化にもつながると思う。

近年は、観光を取り巻く環境が大きく変化している。国内外の観光地間の競争が激化していること、旅行形態が団体旅行から個人・家族・グループ旅行へと変化していること、旅行目的も名所などの「見物観光」から、多様な観光動機や特定の目的を持った「目的観光」へと変化していることなどが挙げられる。

このため、従来の観光資源に頼るいわゆる「定番型観光」だけでは、継続的に観光客を呼び寄せることは難しい状況であり、今後はこのような観光行動の変化や旅行客の様々なニーズにこたえていく必要があると思っている。


──北海道の観光の強みと弱みをどう考えているか。
強みは、先ほども申し上げたとおり素材のよさだと思う。北海道は自然一流との評価を頂いているが、その自然を活用したものとして、特に近年高い人気を得ているもののひとつに「花観光」がある。現在、道内各地では、北海道ならではの花に着目した観光地づくりが行われており、台湾や香港など、海外からのお客様にも好評を得ている。また、平成17〜18年度は、JRグループの全面的な支援のもと、「はなたび北海道」キャンペーンを全道一円で展開した。さらに、今年は、全道を舞台として民間が中心となった各種の花や園芸のイベントなどが予定されている。

その一方で、弱みは素材のよさを十分に活かしきれていない現状があるのではないかということだ。「食」に関して申し上げると、今までは素材を原料のまま道外に提供していくという姿勢だったが、観光における「食」の重要性の認識が深まり、ようやく農業や水産業の分野で、観光と連携しいかに付加価値を高めていくかという動きが強まってきた。北海道観光と有機的に結び付けて地域ならではの食の文化ということを発信し、多くの観光客の方々を惹き付けていく努力をしていかなければならない。

また、北海道観光における課題としては、今のところ集客を優先した団体旅行には対応できていると思うが、今後増加していくことが想定されるリピーターや個人グループなどの多様なニーズにいかに観光業界や地域がこたえていけるかが重要だと考えている。例えば、阿寒では具体的な取り組みとして、冬期間、イオマンテの火祭りということで、町の中で観光客の方々に松明を持って歩いて頂き、また屋内劇場でアイヌの人たちによる伝統舞踊のライブをお見せするということを行っている。やはり、観光客の方々の様々なニーズに対応するためにはこのように各地域で新しい観光資源を発掘し、創造し、地域ごとにきめ細やかな配慮や工夫が必要であると感じている。

道内には、全国的に最もおもてなしレベルの高いと言われている宿がある。そうした意味では、きめ細やかな対応をするという部分についても自信を持ってそれぞれの地域の特性を活かしながら今後の観光事業を進めていく努力が重要だと思う。

──「食」に関しては北海道には豊富な食材があると思う。中でも最近、新しい食材として「エゾシカ肉」への注目度が除々に高まってきていると感じる。知事にも以前、エゾシカ肉の試食会には参加して頂いたが、先日、「エゾシカ肉料理を楽しむ会」という催しがあり300人くらいの参加で盛大に行われた。料理も種類が増え、非常においしくなったと思う。ますます新しい北海道の食材としてエゾシカが活用されればと思う。
はい。ぜひエゾシカ肉も活用して北海道の魅力をアピールして頂きたいと思う。昨年11月東京で行われた「北海道洞爺湖サミットの夕べ」でもエゾシカを加工した料理が好評を得ていた。

──北海道大学では、観光振興を目指し、大学院に観光創造専攻を新設した。人材育成は極めてこれから大変重要と思うが、どのように考えるか。
地域がその特性を活かした魅力ある観光地づくりを進めるためには、観光団体や観光事業者はもとより、地域住民や大学、行政などが協働して取り組むことが必要だ。

そのような取り組みを支え進めていく上では、地域観光をマネージメントする人材、質の高い通訳ガイドやアウトドアガイドなど、観光産業に従事する質の高い人材の育成を幅広く進めていくことが必要だと考えている。
そうした中で、北大大学院のスタートは大変意義深いことだと思う。観光というのは、観光客の方々にいかにアプローチするかという経験を現場感覚で積み重ねていく部分が多いけれども、それだけではなくいわば理論的にあるいは体系的に観光振興をバックアップしていくために視野の広い多彩な人材の育成が重要になってきており、その意味で大学院の貢献を大いに期待している。

──観光をリーディング産業として成長させていくには、中核となる推進組織が必要だが、長い間本道観光をリードしてきた北海道観光連盟が、今春、衣替えをすると聞いている。また、観光は地域の人たちがしっかりと関わっていくことが大切だ。知事は、これからの北海道観光をどのような戦略の下に進めていくのか。
今年4月発足予定の新しい観光組織の会長を坂本JR北海道相談役に引き受けて頂くということで、今、発足に向けて着々と準備が民主導で進んでいることは嬉しく思っている。今後はそういった組織を中心にわれわれ行政、そして観光の現場で日々ご努力されている経済界の方々、みんな心をひとつにして北海道観光のさらなる向上をしなければならないと思っている。

北海道観光の戦略としては、先ほども申し上げたが、「食」の魅力アップ、観光産業の育成と拡大、地域が一体となった観光振興などを中心に進めていきたい。特に観光産業の育成に関しては、地域の一次・二次産業との連携を深めながら新たな観光ビジネスの創造につなげていきたい。

また、オール北海道で設置された「北海道観光戦略会議」での議論をベースに、今、申し上げたように、北海道観光連盟の機能を取り込んだ「新たな観光推進組織」の発足に向けて現在、準備が進められている。

さらに、道では、今後5年間の北海道観光の方向性を示す基本計画として、「新しい北海道観光のくにづくり行動計画」の20年度スタートに向け、現在策定中だ。

今年は、サミットをはじめ新組織の発足や行動計画のスタートなど、北海道観光にとって大きな変革の年になる。そうしたことを皆が意識しながら、それぞれが「地域」をしっかりと見つめ直し、北海道の魅力をPRできるセールスマンになることが大切であると思う。私も先頭に立って、関係者の皆さんとともに行動していきたい。

──ありがとうございます。さらに北海道観光が発展するように期待しています。
ありがとうございます。

【プロフィール】
たかはし・はるみ 1976年一橋大学経済学部を卒業、通商産業省に入省。貿易局輸入課長、中小企業庁経営支援部経営支 援課長、北海道経済産業局長、経済産業研修所所長などを経て、2003年北海道知事就任。現在2期目。


【聞き手・石子彭培】
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