電脳交通(徳島県徳島市、近藤洋祐社長)は2023年4月4日、複数の新規投資家および既存投資家を引受先とした総額約12億円の資金調達を実施した。今回の調達による累計資金調達額は約27億円(※)。今後は、地域交通の課題解決に向けたタクシーのDXを加速するとともに、事業基盤を活かしたデマンド交通や脱炭素などの新たな取り組みに着手し、日本の地域社会が抱える移動・交通の課題解決を目指す。(※エクイティ・デッドファイナンスの合算額)
- アフターコロナの地域交通とタクシー業界の課題
社会を支える重要な移動インフラであるタクシー業界は、以前からIT化の遅れやドライバーの高齢化など課題に直面しており、2020年以降のコロナ禍において人流が抑制されたことにより苦境を迎え大幅な売上低下や廃業も相次ぎました。そして感染状況が収束し観光や移動ニーズが戻ってきたいま、業界全体が深刻な人手不足という課題に直面しています。
また国内では一部の大都市圏を除き、既存の公共交通インフラの採算が合わず地方の鉄道・バス路線の約8割が赤字路線という、地域交通の維持・存続における課題も抱えています。
- これまでの歩みと資金調達の主な目的
当社は「タクシーのDX」をミッションに、2015年12月に創業、低価格で常に最新機能を使用できるクラウド型タクシー配車システム「DS」の開発・提供、配車業務の委託サービス「Taxi CC」など業界の人材不足解消・業務負担軽減につながるサービスを提供し、毎年約200%ペースで導入車両数が拡大、2023年3月時点で全国45都道府県の事業者様に導入いただいております。
サービスの詳細:https://cybertransporters.com/service
クラウド型タクシー配車システム「DS」(左:オペレーター用画面・右:乗務員用車載タブレット)
現在では自治体向けにデマンド交通サービスの運行管理が可能なソリューション提供を全国30箇所以上へ展開、その他タクシーのEV化を促進するためのプロジェクトを業界大手の第一交通産業グループと共同で展開しNEDO採択事業に選ばれています。
- 資金調達の目的
サプライ領域におけるタクシーDXを実現するためのプロダクト強化、既存事業のさらなる伸長を見据えた組織基盤の強化、将来的なIPOを視野に入れた体制構築に向けた採用強化に取り組みます。
また各株主さまとは資本業務提携を締結し、資金面だけでなくデマンド交通サービスや脱炭素関連のプロジェクトを共同で展開し、業界の活性化や地域交通に必要とされるサービスの早期実現に、本格的に取り組んでまいります。
本第三者割当増資における引受先一覧(順不同・敬称略)
〈新規引受先〉:JPインベストメント、ENEOSイノベーションパートナーズ合同会社、四国旅客鉄道株式会社、沖東交通グループ、三和交通
〈既存引受先〉:三菱商事、第一交通産業、エムケイ、阿波銀行、徳島大正銀行、いよぎんキャピタル
- 新任取締役のご紹介〜組織体制の強化〜
より一層の組織体制の強化、事業成長に向けた取り組みの一環として、JPインベストメントと三菱商事より以下計2名の社外取締役を招聘します。
瀬尾 萌 | 社外取締役(予定) | JPインベストメント株式会社 地域・インパクト投資部 担当部長
ゴールドマン・サックスに新卒で入社。その後ビズリーチ(現ビジョナル)に入社し、子会社を含む管理本部業務に従事。2018 年4月に JP インベストメントに参画 |
莊司 茂雄 | 社外取締役 | 三菱商事株式会社 モビリティ事業本部 戦略企画室長 1992年4月三菱商事入社、イノベーション事業やICT事業本部、中国やインドのITサービス事業本部の室長を歴任し、2020年4月より現職 |
- 今回の資金調達ラウンドに参画した各社からのコメント ※敬称略、順不同
JPインベストメント株式会社代表取締役社長 古宮博幸
JPインベストメントは、電脳交通によるクラウド型タクシー配車システムや配車業務の委託サービスの提供が、タクシー業界が求める業務効率化と人材不足解消、引いては地域住民の方々の交通の利便性確保や向上につながると考えています。
長期的に持続性の高い地域交通を確立することが期待できる同社の事業は、社会へのポジティブインパクト創出によるSDGsの目標達成に貢献するという弊社ファンドの理念に合致することから、「インパクト投資」としての出資をさせて頂くことと致しました。今後、地方の生活を支える交通手段の持続性確保に取り組む電脳交通の挑戦を支援してまいります。
ENEOSホールディングス株式会社 未来事業推進部事業推進3グループマネージャー 六代玲子
当社は他社とのオープンイノベーションの推進により、街づくり・モビリティ領域の革新的事業の創出を目指しています。電脳交通のサービスは、タクシーの配車業務を効率化させるだけでなく、地域交通の課題を広く解決する一助になると考えております。今回の資本業務提携を契機として、環境負荷を低減できるEVを活用したフリートマネージメントサービスやデマンド交通サービスなど、新たな価値を創るパートナーとして関係を構築していけると期待しています。
三菱商事株式会社 自動車・モビリティグループ モビリティ事業本部長 髙井直哉
この度は電脳交通が成功裡に資金調達されたことはタクシーDX化を推進する同社に対する期待の表れだと思います。弊社は2020年の資本業務提携以降、電脳交通と共にタクシーを切り口に地域交通の課題解決に取り組み、新たなソリューションを提供して参りました。今回の増資をきっかけにその取組みを加速させ、これまで以上に貢献して参りたいと思います。
第一交通産業株式会社 グループ本社 代表取締役社長 田中亮一郎
タクシー業界もコロナ禍を経て非常に厳しい経営環境が続いておりますが、公共交通として地域の移動を守り続ける事、そして社会変革に対応していく事が求められております。
また地域交通の文脈では、人材不足に苦しむ地方こそIT化やDX化によるサポートが必要であり、今後はカーボンニュートラル社会へ向けて、GXの取組みも重要となります。電脳交通様には、既に当社にて交通DXやグリーンイノベーション基金事業でご一緒頂き、ローコストで最適なソリューションの提供をいただきました。今後は当社が旗振り役を務めるNo1タクシーネットワークというタクシー会社の相互連携ネットワークにおいてより一層の連携を期待し、この度の資本業務提携を決めさせていただきました。
四国旅客鉄道株式会社 代表取締役社長 西牧世博
JR四国では、地域の関係者とともに、モビリティ間の連携強化などに取り組むことによって、四国に最適で持続可能な「公共交通ネットワークの四国モデル」を追求しています。こうした中、四国を代表するモビリティ企業である電脳交通様と資本業務提携に至ったことは、非常に心強く思います。電脳交通様がこれまで培われた取り組み、そしてこれからの新たな取り組みとも連携し、地域交通の課題解決を通じて、今後も四国地域の発展に貢献したいと考えています。
沖東交通グループ 代表理事 東江一成
この度、株式会社電脳交通様との資本業務提携する運びとなりました。
電脳交通様の配車システムを2021年に導入し約1年半、弊社からの様々な難題課題を解決に向け必死に考えていただいたその姿勢と解決実績、新たなアイディアを共に形にしていこうという姿勢が、パートナーとして信頼できる証となりました。この度の資本業務提携により信頼関係がより強固なものとなり、地域交通の活性化や先進的な事業への取り組みが一層加速されていくものと期待しております。
エムケイホールディングス株式会社 代表取締役社長 青木信明
電脳交通様との二度目の資本提携を決断したのは、コロナ禍という逆境を跳ね返すようにリモート受注や最も大規模な京都 MK の配車システムの立ち上げなど、課題解決へのビジョンを共有しスピード感をもって対応していただいたからです。
ますます変化の激しい時代、 MK グループが目指すのはタクシー・ハイヤー事業を超えた新しい領域へのチャレンジです。お客様、従業員、そして社会にインパクトを与えられる企業体へと進化すべく、ともに歩むパートナーとしてこれからも期待しています。
三和交通株式会社 代表取締役社長 吉川永一
電脳交通は革新的なアイデアや技術を駆使した交通サービスを展開し、業界内でも高い評価を受けている企業です。
私たちは今回のシリーズC出資により、電脳交通が更なる事業拡大や技術革新を進め、お客様にとってより快適で安全な移動環境を提供することに期待しています。同時に、電脳交通の取り組みにはタクシー業界としても大きな期待を寄せていて、交通領域の新たな技術やサービスが普及することで、多くのタクシー会社が救われていくと期待しています。今後は、電脳交通と三和交通が連携し、相互のノウハウを活かした新たなサービスやビジネスモデルの開発を進めていくことで、より良い未来を創造出来るのではないかと楽しみにしています。
株式会社阿波銀行 代表取締役頭取 福永丈久
株式会社電脳交通さまは、徳島を代表するスタートアップ企業です。新型コロナにより世界が加速度的に変化するなか、いちはやく地域交通の課題解決・イノベーションに取り組まれ、DXを強力に推進しておられます。当行としては、業界を牽引していく電脳交通さまをぜひ支援したいと考え、今回の出資に至りました。当社には、徳島を代表する企業に成長していただきたいと考えております。当行も引き続き、地元企業の支援を通じて、徳島の経済の発展に貢献してまいります。
株式会社徳島大正銀行 代表取締役頭取 板東豊彦
生活者や旅行者のタクシー利用の利便性向上、タクシー業界のさらなるIT化に対する社会からの要請は一段と強くなっております。株式会社電脳交通は、タクシーの配車システムを始め、業界の様々な課題解決に取り組まれている先駆的な企業であります。近藤社長の強いリーダーシップのもと、タクシーのDXを実現され、利用者やそこで働かれる方々にとっても有用で、地域交通の課題を解決するプラットフォームになるものと大いに期待しております。徳島を代表する企業として、全国そして世界で貢献される企業となられますことを祈念しております。
いよぎんキャピタル株式会社 代表取締役 濱口俊樹
2020年の初回投資以降、電脳交通様の力強い事業成長を側で見てきたことから今回の追加投資も即決いたしました。近藤社長がタクシー会社経営をする中で悩まれた課題を起点とする当社のソリューションは、ユーザーに寄り添った設計や機能性が高く評価され、45の都道府県のタクシー会社で導入されるなど既に全国区のサービスに成長しています。いよぎんキャピタルといたしましては、地元四国を代表するスタートアップである電脳交通様が、地域交通を支えるキープレイヤーであり続けると確信しており、今回の資金調達を機にさらなる飛躍を遂げられることを大いに期待しております。
- ■電脳交通のSDGsの取り組み
電脳交通は創業以来、地域公共交通の維持・存続のためにタクシー事業者向けの配車システム開発・提供や配車委託サービスを提供してまいりました。また2019年からは全国の自治体・公共団体・民間企業と連携し多くのMaaS・地域交通に関する実証実験を進め、2021年に地域交通ソリューションとして事業化しデマンド交通分野などにも一層力を入れております。
高齢化・人口一極集中で地方の公共交通機関の約8割は赤字となっており、営業撤退や縮小によって交通弱者の増加や交通空白地帯が拡大しています。こうした状況を踏まえわたしたちは引き続き創業の精神と国連が定めたSDGsを尊重し「すべての人がいつでも生活に必要な移動ができる社会」と「地域に必要な移動を支える交通事業者がいつまでも存続可能な社会」の実現に向け努力してまいります。
https://cybertransporters.com/sdgs
電脳交通が特に注力し貢献目標を掲げる5つの目標
■株式会社電脳交通の概要
会社名 :株式会社電脳交通(英語表記:Dennokotsu Inc.)
所在地 :徳島県徳島市幸町3丁目101リーガルアクシスビル4F
設 立 :2015年12月
代表者 :近藤 洋祐
従業員 :157名(2023年2月末時点)
資本金 :1億円(2023年2月末時点)
主要株主:三菱商事、JPインベストメント、ENEOSイノベーションパートナーズ合同会社、JR東日本スタートアップ、JR西日本イノベーションズ、GO株式会社、第一交通産業グループ、エムケイ、沖東交通、三和交通、NTTドコモ・ベンチャーズ、阿波銀行、徳島大正銀行、いよぎんキャピタル、ブロードバンドタワー(敬称略、順不同)