日本を代表する陶器の産地、笠間(茨城県笠間市)と益子(栃木県益子町)が県境を越えて連携し、観光の活性化に取り組み始めた。茨城交通(水戸市)が4月18日に東京・秋葉原と両地域を結ぶ高速バス「関東やきものライナー」の運行を開始したのがきっかけ。両地域は隣接こそしていないが、中心部の間の距離は20キロほど。高速バスの運行を契機に連携の重要性を再確認し、ともに観光客の増加を目指す。
笠間焼は、江戸中期に箱田村(現在の笠間市箱田)の久野半右衛門が近江信楽の陶工に指導を受けて窯を築いたことに始まる。益子焼は、江戸末期、笠間で修行した大塚啓三郎が築窯したのが始まり。
窯元、陶芸作家などの数は笠間が約300、益子が約440。両地域ともに陶芸をテーマにした観光やイベントの人気が高い。ただ、行政区域の違いや交通機関のアクセスの課題から、観光振興への持続的な連携はとられてこなかった。
両地域を結び付けたのが関東やきものライナーの運行開始。茨城交通は昨年6月から東京・秋葉原と笠間を結ぶ高速バスを運行していたが、東京方面からの観光客の誘客を拡大しようと、益子までの延伸を決めた。
秋葉原〜笠間・益子間を1日4往復(うち上りの1便は笠間〜秋葉原間)。1便の定員は約40人。片道の運賃(2枚チケット購入の場合)は秋葉原〜笠間が1250円、同〜益子が1700円。秋葉原〜益子間を最短で2時間40分で結ぶ。
茨城交通の任田正史社長は「やきものをテーマにしたことで関係者の連携がうまく進んだ。高速バスの運行を観光振興につなげたい。両地域を巡ってもらい、宿泊にもつながるようになれば理想的」と説明した。
運行初日には東京・有楽町で両地域の関係者が参加して、記念イベントや陶器の販売が行われた。笠間市の山口伸樹市長は「高速バスの運行は民間のアイデアが生きた取り組み。両地域の振興にとって大きなインパクトになる」。益子町の大塚朋之町長は「客の流出を心配するより、連携を大事にして一緒に観光を盛り上げたい」と語った。
高速バスの運行開始を持続的な連携につなげようと、笠間市、益子町、茨城県、栃木県の観光関係者は、「かさましこ観光協議会」を発足させた。今年2月に初会合を開き、連携して観光事業を進めることを確認した。会長に就いた増渕浩二・笠間観光協会会長は「笠間と益子は同じルーツを持つ兄弟産地。連携を深めて、多くの観光客に“かさましこ”を楽しんでもらいたい」と話す。
秋葉原発の高速バスの乗客には、笠間、益子の協賛店舗で割引やプレゼントの特典が受けられるクーポンパスを配布。笠間でのレンタサイクルを半額にしたり、益子焼の粗品をプレゼントしたりする。協賛店舗は18日時点で16店舗だが、順次拡大していく。
陶器をテーマにした今年の大型イベントの日程は、笠間市の「笠間の陶炎祭(ひまつり)」が4月29日〜5月5日、「笠間浪漫」が10月11〜14日、益子町の陶器市は春が4月27日〜5月6日、秋が11月1〜5日。イベントのほかにも、両地域ともに陶芸美術館や陶芸が体験できる施設がある。