安倍晋三首相は22日、通常国会で施政方針演説を行った。観光施策では「観光立国は地方創生の起爆剤」として、地方への外国人誘客、観光資源の活用、羽田・成田空港の発着枠拡大などを推進し、2020年の訪日外国人4千万人の目標達成に改めて意欲を示した。
17年の訪日外国人旅行者数が2869万人を記録したことについては、「地方を訪れる観光客は、3大都市圏に比べて、足元で2倍近いペースで増えている」と成果を強調。訪日クルーズ船の寄港が増加している沖縄県の観光振興にも触れた。
他方で課題として「わが国には、十分活用されていない観光資源が数多く存在する」として、文化財や国立公園の活用を重視。IR(統合型リゾート施設)の整備では、依存症対策などの課題に対応しながら滞在型観光につなげるとした。
羽田・成田空港の発着枠は、「世界最高水準の100万回にまで拡大する」。観光促進税(出国税)の活用では、「観光先進国にふさわしい快適な旅行環境の整備を行う」との方針を示した。
観光施策以外では、生産性向上について、中小・小規模事業者が直面している人手不足に対し、キャリアアップ助成金を拡充して人手確保を支援するほか、生産性向上への投資を支援していく考えを示した。「生産性革命」に向けた新法も制定するという。
外交では、今年が日中平和友好条約締結40周年であることから、「経済、文化、観光、スポーツ、あらゆるレベルで日中両国民の交流を飛躍的に強化する」と述べた。
施政方針演説のうち「観光立国」の部分は次の通り。
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観光立国
明治時代に建設された重要文化財の一つである旧奈良監獄は、3年後にホテルへと生まれ変わります。わが国には、十分活用されていない観光資源が数多く存在します。文化財保護法を改正し、日本が誇る全国各地の文化財の活用を促進します。自然に恵まれた国立公園についても、美しい環境を守りつつ、民間投資を呼び込み、観光資源として活かします。多くの人に接していただき、大切さを理解してもらうことで、しっかりと後世に引き渡してまいります。
日本を訪れた外国人観光客は、5年連続で過去最高を更新し、2869万人となりました。地方を訪れる観光客は、3大都市圏に比べて、足元で2倍近いペースで増えています。
観光立国は地方創生の起爆剤です。
沖縄への観光客は、昨年9月までで、ハワイを上回りました。4年前、年間わずか3隻だった宮古島を訪れるクルーズ船は、昨年は40倍以上の130隻となりました。クルーズ船専用ターミナルの2020年供用開始に向けて、岸壁の整備を本格化いたします。アジアのハブを目指し沖縄の振興に引き続き取り組んでまいります。
IR推進法に基づき、日本型の複合観光施設を整備するための実施法案を提出します。これまでの国会における議論を踏まえ、依存症対策などの課題に対応しながら、世界中から観光客を集める滞在型観光を推進してまいります。
羽田、成田空港の容量を、世界最高水準の100万回にまで拡大する。その大きな目標に向かって、飛行経路の見直しに向けた騒音対策を進め、地元の理解を得て、2020年までに8万回の発着枠拡大を実現します。
観光促進税を活用し、瞬時に顔を認証して入管審査を通過できるゲートを整備するなど、観光先進国にふさわしい快適な旅行環境の整備を行います。
2020年の訪日外国人4千万人目標の実現に向けて、全力を尽くしてまいります。