能登の祭り、キリコ祭りの魅力を紹介する石川県輪島市の観光施設「キリコ会館」は、運営会社が民事再生手続きの廃止決定を受け、今年10月から輪島商工会議所が暫定的に営業を受け継いでいる。保全管理人との調整で賃貸契約による当面の営業存続が決まったことで、観光への影響はくい止められた。一方、輪島市は、今後の対応として施設の継承や代替施設の建設などを幅広く検討するため、今年度の補正予算案に調査費を計上、具体策の検討を始める。
能登の夏秋の祭礼には、各町内からキリコ(切籠)と呼ばれる大型の御神灯が担ぎ出される。キリコは漆や金箔で装飾され、高さは5メートル前後から10メートル前後まで地域によって特色がある。
キリコを展示する観光施設がキリコ会館。運営会社の再生手続きの廃止に伴い10月6日に営業を停止したが、観光への影響を懸念した商工会議所が早期に動き、同14日には営業を再開させた。商工会議所や市などが旅行会社などへのPRに努め、団体客の予約を含めて客足は平常通りに戻っている。
キリコ会館の運営について、輪島商工会議所の里谷光弘会頭は「専属の職員を配置するなど、当面の営業に支障がないよう商工会議所で運営していく。営業できなくなれば、輪島観光にとって大きな損失。その点に関しては保全管理人らの理解を得ている」と述べ、旅行会社などにこれまで通りの送客を呼びかけている。
輪島商工会議所副会頭を務める旅館、八汐の谷口和守社長も「一時は心配したが、キリコ会館の営業が継続できて良かった。『あぜのきらめき』など冬季の観光イベントに加え、来年4月からは能登有料道路の無料化もある。多くの旅行者に輪島観光を楽しんでもらいたい」と話している。
キリコ会館は、輪島市の中核的な観光施設であると同時に、各町が祭礼に使用するキリコ30基余りを保管している。地域の伝統文化の保存、継承に関する役割も担っており、施設の存続については地域住民の関心も深いという。
当面の運営に関する懸案を回避できたものの、運営会社の処理に絡む問題もある。輪島市では、施設の今後のあり方を検討する調査費を12月議会に提案した今年度補正予算案に計上している。施設の継承や代替施設の建設などさまざまな対応策を模索する考えだ。
多くのキリコを展示しているキリコ会館