旅客税財源分が520億円
観光庁の2020年度予算の概算要求額が8月28日に発表された。東日本大震災に伴う東北の復興枠を除く要求額は、19年度当初予算比11%増の737億円となった。このうち520億円は国際観光旅客税を財源とする予算で、観光庁に加えて他の省庁の観光関連事業に移し替えて執行される分も含んでおり、具体的な使途は今後決定される。他の一般財源の予算部分は観光庁が執行する事業の予算要求で、訪日旅行のプロモーションの強化、受け入れ環境整備などに充てる。
要求額のうち国際観光旅客税の予算を除いた一般財源の予算額は、19年度当初予算比20%増の217億円(経常事務費など含む)となった。内訳は訪日プロモーションに117億5千万円、訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策に60億円、広域周遊観光促進のための観光地域支援に14億円、観光産業の人材確保・育成に2億5千万円など。
観光庁の20年度予算要求では、観光産業の基幹産業化や観光地域づくりの支援などの施策に加えて、「政府が(20年を目標年次として)掲げる訪日外国人の旅行者数4千万人、消費額8兆円などの目標を達成するため、即効性のあるような事業にも予算を要求している」(観光庁総務課・吉岡誠一郎企画官)。
20年に訪日外国人旅行者数4千万人を達成するには、18年の実績に対して13%以上の伸び率が必要なため、市場特性に応じた国・地域別プロモーションを強化する。東京オリンピック・パラリンピックでは、オリンピック開催年に外国人旅行者が減少した開催国の事例もあり、訪日客の地方への誘導、訪日時期の分散化を進めるプロモーションも実施する。
国際観光旅客税は19年1月に導入され、出国1回当たり千円を旅行者から徴収している。観光振興に使途を限った特定財源。要求額の520億円は、18年度の訪日外国人旅行者数、出国日本人数を基にした税収の見通しから算出され、19年度の500億円(観光庁計上分とは別枠の宮内庁執行分15億円含む)から20億円の増額となっている。
国際観光旅客税を充当する予算は、概算要求時には観光庁が総額のみを一括計上して要求し、具体的な使途は年末に向けて、政府の観光戦略実行推進会議(議長・内閣官房長官、構成員・全閣僚)で民間有識者の意見などを踏まえて決定される。
政府は国際観光旅客税の使途に関して基本方針を定めている。使途の考え方は、(1)受益と負担の関係から負担者の納得が得られること(2)先進性が高く、費用対効果が高い取り組みであること(3)地方創生をはじめ重要な政策課題に合致すること。
充当する施策は、(1)ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備(2)日本の多様な魅力に関する情報の入手の容易化(3)地域固有の文化、自然などを活用した観光資源の整備などによる地域での体験滞在の満足度向上―の3分野と定めている。
19年度の場合、国際観光旅客税の予算500億円の使途は、観光庁の直接執行分が233億5千万円、法務省、財務省、環境省、文化庁、宮内庁の5省庁の執行分が266億5千万円となっている。観光庁では、デジタルマーケティングなど先進的な訪日プロモーションの実施などに充当。法務省、財務省では、先端技術による出入国や税関の環境整備に、環境省、文化庁では国立公園や文化財の多言語解説の整備に、宮内庁では三の丸尚蔵館の整備に充てられている。