観光庁・文科省、地方への訪日教旅拡大で提言


 海外からの教育旅行を地方に増やそうと、観光庁と文部科学省はこのほど、有識者でつくる検討会の議論を踏まえ、受け入れの促進に関する報告書をまとめた。政府は年間訪問者数を現状の5割増にする目標を掲げるが、受け入れに関わる人材や財源の確保、ニーズの高い学校訪問の受け入れ校の調整など、地域には課題が多い。報告書は、長野県の施策を先進事例として紹介し、課題解決の方向性を提示している。

 首相が主宰する観光立国推進閣僚会議が策定した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」には、海外からの教育旅行の訪問者数を2020年までに現状(13年度約4万人)の5割増にすることが目標に定められている。

 文科省の調査によると、訪日教育旅行の受け入れは13年度が4万4503人(2340校)。東日本大震災が影響した11年度に比べると約7割増だが、06年度の5万8147人(2454校)を下回っている。訪日外国人旅行者数の増加の一方で、教育旅行は顕著な伸びを示していない。

 報告書は、「受け入れに積極的に取り組む地方自治体は極めて限定的」と指摘する。13年度の実績を都道府県別に見ると、(1)東京都4084人(2)長野県3702人(3)大阪府3549人(4)兵庫県2671人(5)京都府2076人(6)福岡県1898人(7)広島県1888人(8)千葉県1607人(9)愛知県1594人(10)静岡県1534人。ゴールデンルート上の自治体を中心に10位までで全体の55%を占めている。

 受け入れの促進に関しては、現場から多くの課題が挙がっている。主な課題は(1)学校訪問などの受け入れの調整を担う組織や人材が確保されていない(2)教育課程などの問題から訪問受け入れ校のスケジュール調整が難しい(3)通訳、記念品、教材の準備など受け入れ費用の財源がない—などとなっている。

 解決策を見出すため、受け入れに積極的な長野県に着目。13年度の受け入れ実績は東京都に続く全国2位で、同県の統計によると、14年度の受け入れは4152人(114団体)に達している。国・地域別構成比は台湾が58%、中国が29%、シンガポールが3%など。

 報告書は、ヒアリングに基づき長野県の優れた施策を次のように紹介している。

 関係機関との連携=県観光部の国際観光推進室が、教育委員会や学校との調整を担当。英語や中国語が堪能な職員を採用したり、元学校長を配置したりしている。教育委員会も訪日教育旅行の担当者を置いている。

 プログラムの充実=学校訪問で来訪側が期待する交流内容とのミスマッチが生じないように交流申請書を整備し、旅行会社との連携も緊密化。受け入れ校の教育課程への影響に配慮し、授業以外にも部活動などでの交流を支援している。

 予算の確保=県が明確な受け入れ目標(15年度120団体)を設定し、訪問受け入れ校に必要となる教材、記念品、通訳の費用などを支援する予算(年間約180万円)を確保している。

 報告書は、長野県の事例を参考に、自治体の受け入れ促進の具体策として(1)観光部局における調整、相談窓口の構築(2)観光部局と教育部局の連携(3)財源の確保—などを挙げた。財源では地域による予算のねん出のほか、一定の負担を来訪側に求めることを検討すべきと提言している。

 観光庁、文科省では、報告書を踏まえ、地域と海外を結ぶ一元的窓口を日本政府観光局(JNTO)に位置づけるほか、受け入れ促進のための施策の具体化を早急に検討、実施したい考えだ。

 
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