観光庁の有識者会議「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」(委員長・山内弘隆一橋大学大学院商学研究科教授)が8日、旅行業法の見直しに向けた中間報告をまとめた。国内・訪日旅行の手配業務を担うランドオペレーター(以下、ランオペ)を登録制度などによって規制するほか、着地型旅行を企画・提供しやすい環境づくりに向けて地域限定旅行業などの登録要件を緩和することを盛り込んだ。観光庁は、中間報告を踏まえて次期通常国会に旅行業法の改正法案を提出する。
中間報告では、旅行業者の委託を受けて交通、宿泊などの手配を行うランオペ事業者を対象に、新しい区分の登録制度などを設けるように提言。BtoBの領域であることから旅行の安全確保などに絞った規制内容とする。電子データなどの形式を含めて契約書面の作成、保存を求めるほか、研修などで簡易に取得できる資格者を設置するように義務付ける。
ランオペ業務には、旅行先で法令違反を行わせるような手配や旅行サービスの提供を不当に遅延させる行為などの禁止事項を定め、違反には罰則を設ける。無登録のランオペ事業者と取引した旅行業者を処分できるようにするほか、宿泊施設や交通事業者などにも取引しないように関係機関が協力して取り組む。
規制は国内・訪日旅行の手配業務が対象で、海外旅行の手配業務は対象外とする。国内の旅行業者と海外のサービス提供事業者の間で行う海外旅行の手配業務については、消費者保護の観点から規制の必要性を引き続き検討していく。
一方の着地型旅行を企画・提供しやすい環境づくりに関して中間報告は、自治体や観光協会、DMO(観光地域マネジメント・マーケティング組織)、旅館・ホテルなどの旅行業への参入を念頭に、一部の旅行業登録の要件緩和を提言した。
地域限定旅行業では、旅行業務取扱管理者(以下、管理者)について、現行の「総合」「国内」の資格に加え、地域限定旅行業者の業務内容に絞った資格を創設し、新たな試験を実施する。地域限定旅行業の管理者は、例えば、取扱額が少ない営業所で一定の時間帯の勤務などを条件に、営業所間の兼務を認める。
地域限定旅行業の業務範囲、第3種旅行業の募集型企画旅行の業務範囲は、現行の「営業所が所在する市町村とその隣接市町村」を維持するが、観光庁長官が区域を追加できることを規定した施行規則を柔軟に運用する。現行と同程度の範囲内で、観光ルートや交通拠点などの実態を踏まえた設定を認める。
特定の旅行業者から委託を受けて旅行商品を販売できる旅行業者代理業では、宿泊施設などが参入しやすいように、複数の旅行業者の商品を扱うことができる新区分を設ける案が議論されたが、さらに検討が必要として具体化を見送った。観光庁では、今回の法改正では代理業の新区分の創設を見送る方向だ。