日本旅館国際女将会(長坂正惠会長)は16日、観光庁観光産業課長の柿沼宏明氏を講師に招いて、3月定例会を東京・日本橋の能舞台のあるレストラン&バー「水戯庵」で開いた。33人が参加した。
柿沼課長は「宿泊産業の進むべき方向性」と題して講演。「世界の富裕層を相手にするトラベルデザイナーなどにヒアリングをしたところ、『日本の宿泊施設で、大切なゲストを安心して預けられる宿泊施設はほとんどない』『ハード面はともかく、ソフト面に課題がある』『どの地域の宿泊施設も同じようなものばかりで、地域による個性が感じられない』という厳しい評価だった」と述べた。
その上で「旅館は、地域の歴史、文化などに裏付けされた地域固有のストーリーが集約された地域のショーケース。旅館は、建築に使う資材、食事に使う食材、その他もろもろ地域に根差す事業者との経済的結びつきが強く、地域経済発展のけん引役だ」と指摘。さらに「既に海外の投資家、デベロッパー、オペレーターなどがわが国より先んじて、旅館の持つ独自の魅力に気付き始めている現実がある」と話した。
旅館の抱える課題については、観光地経営への参画の不足、企業的経営視点の不足、人手不足、PMSをはじめとするシステムの規格のガラパゴス化などを挙げた。
これらの課題解決のため、「宿泊施設を中心とした、地域一体となった面的な観光地再生・高付加価値化の取り組みについて、地域計画の作成や地域計画に基づく改修事業などを強力に支援する」と説明。具体的には、宿泊施設の高付加価値化改修、廃屋撤去・跡地の整備、統一的な外観形成、事業再生などを支援していくとした。
「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン・登録制度」についても言及。生産性・収益力の向上、従業員の待遇改善などの宿泊業の高付加価値化に向けた経営を行う宿泊施設を、観光庁の宿泊事業者向けの補助事業において審査の際の加点対象とすると解説した。同制度の登録事業者を予算で積極的に支援することで、家業的経営からの脱却、企業的経営への転換を促進し、宿泊業の生産性・収益力の向上、従業員の待遇改善を促進し、「持続可能な稼げる産業」に変革しなければならないと強調した。
東京・日本橋のレストラン&バー「水戯庵」で開かれた
観光庁の柿沼課長