観光圏整備法の基本方針の改正を踏まえ、6地域が再申請を行い、新しい観光圏として認定を受けた。旧基本方針で認定を受けた地域は、新観光圏への移行が必要となる。一方で再申請を見送り、法律に基づく観光圏を解消した地域もある。観光庁が新観光圏の認定要件としたのは、観光地域づくりに持続的にかかわる民間の人材を中核とした推進組織の設置。地域としていかなる態勢で滞在交流型の観光に取り組むかが問われている。
観光圏整備法は7月で施行から5年を迎える。観光庁では観光圏に49地域を認定したが、推進状況に地域差がみられるとして課題を整理。成果が上がらない理由を(1)取り組みをけん引する組織が明確でない(2)リーダーシップを発揮する中核人材がいない(3)役割分担が不明確で連携が進んでいない(4)圏域が広すぎるなど設定が適切でない—などと分析した。
課題を踏まえて昨年12月に基本方針を改正した。特に観光地域づくりを推進する態勢、人材に着目。観光圏の認定要件として、地域と市場を結ぶ窓口機能を担う事業体「観光地域づくりプラットフォーム(PF)」の設置と、PFの構成員として持続的に実務に携わる民間人材「観光地域づくりマネージャー」の配置を必須とした。
基本方針の改正について、観光庁観光地域振興部の七條牧生観光地域振興課長は「要件のハードルを上げたことに不満は出るかもしれないが、観光地域づくりは急務。成果を上げるには地域をマネジメントする組織が必要で、その組織が機能するには、地域の将来を見すえて持続的に取り組む人材が不可欠だ」と指摘する。
改正された基本方針のもとで整備実施計画の認定を受けた新観光圏は、富良野・美瑛(北海道富良野市など)、雪国(新潟県湯沢町など)、八ヶ岳(山梨県北杜市など)、にし阿波〜剣山・吉野川(徳島県三好市など)、阿蘇くじゅう(熊本県阿蘇市など)、「海風の国」佐世保・小値賀(長崎県佐世保市など)。いずれの計画期間も2018年3月までの5カ年。
新観光圏は、複数の観光地域づくりマネージャーを構成員とするPFを設置している。富良野・美瑛はふらの観光協会、雪国は雪国観光圏(観光圏名と同じ一般社団法人)、八ヶ岳は八ヶ岳ツーリズムマネジメント、にし阿波はそらの郷、阿蘇くじゅうは阿蘇地域振興デザインセンター、佐世保・小値賀は佐世保観光コンベンション協会をPFに位置づけた。
これら6地域は旧基本方針のもとで08〜10年度に整備実施計画(5カ年)の認定を受けた。うち4地域が13年3月で計画期間を満了、2地域は計画期間を残して前倒しで新観光圏に移行した。13年3月に計画を満了する予定だった伊勢志摩、京都府丹後、淡路島の各観光圏は、基本方針の改正に伴う特例として1年間の計画延長が認められている。
他の地域は、現計画の残存期間は観光圏として存続するが、新観光圏に移行するには再申請が必要。また、新たな地域が圏域を設定して新規に申請することも可能だ。
一方、法律に基づく整備実施計画の終了により観光圏を解消することになった地域は、南房総、はこだてなどの9地域。東日本大震災の被災地を抱える地域のほかにも、PFの設置を検討してきた地域なども観光圏を外れている。
千葉県の館山市、鴨川市、南房総市、鋸南町でつくる南房総観光圏は、新観光圏への申請を見送った。ただ、法定協議会の枠組みは残し、引き続き4市町で滞在交流型の観光地域づくりに取り組む。館山市経済観光部商工観光課は「一元的な窓口として一つのPFを設置するという要件が現状では当地域にそぐわない。南房総らしい形態でPFの機能を発揮できるようにしたい。地域の状況が変われば、再申請も検討する」と話す。
北海道の18市町でつくるはこだて観光圏は、計画満了まで2年を残していたが、法定協議会を3月末に解散した。圏域を函館市、北斗市、七飯町に絞り込んで再申請を検討したが、「今回は準備の不足もあって申請を見送った。国の施策、新観光圏の取り組みに注視しつつ、今後の対応を検討していく」(函館市観光コンベンション部)。
観光庁は、新観光圏による観光地域づくりの先に、国際競争力の高い「ブランド観光地域」の形成をイメージしている。「施策の具体化はこれからだが、『ブランド』とは揺るがない地域独自の価値。地域のDNA、アイデンティティと言ってもいい。これに根ざした持続的な観光地域づくりを新観光圏に期待する」(観光庁の七條課長)。今年度の補助事業も新観光圏を対象に観光地域ブランド確立支援事業として実施する。
滞在交流型の観光地域作りが課題
(写真は、にし阿波〜剣山・西吉野観光圏での体験プログラム)