スキー人口の減少などで観光客減に苦しむ現状を打破しようと、蔵王温泉観光協会(伊東秀幸会長)などが中心となり「蔵王温泉活性化フォーラム」を9日、山形市蔵王総合体育館で開いた。交通機関、行政関係者などの識者を外部から招き、地元観光事業者、常連観光客ら約400人が参加。本音が飛び交う真剣な意見交換の場となった。観光振興懇話会(TPA)も協賛した。
藤野公孝国土交通大臣政務官、齋藤弘山形県知事らが来賓で出席。冬柴鐡三国交相の祝電も届いた。
同フォーラム実行委員長の伊東観光協会長はあいさつで「蔵王温泉の05年の温泉観光客数は136万人、スキー客数は59万人で山形県内最多だが、いずれも5年前から20万人減っている。最盛期のスキー客は169万人だったので今は3分の1だ」とスキー客減の現状を報告。また「韓国、台湾など東アジアからのスキー客は増えている。夏は中高年のトレッキング客が増えている」とし、観光客減に手をこまぬいているわけではないことを説明した。
作家で秋田県公立美術工芸短大学長の石川好氏は、講演で「蔵王は立派な名前とお湯にあぐらをかいてきたのでないか」と指摘。さらに「(観光客に)来てもらいたいと思って待つのではなく、来なくなった理由の分析がまず必要だ」「リピーターを大事にする必要がある」とした。
今回のフォーラムの提唱者で、10年以上毎年蔵王を訪れているソフトウエア会社、イマジニアの神蔵孝之会長も続いて講演し、「ゲレンデがすいていて私は快適だが、蔵王の将来が心配だ。受入態勢を整備して、アジアの富裕層を誘致してはどうか」と提案した。同氏によれば「成功した香港華僑は平均年収が2億円から3億円で、個人資産が平均10億円。人口13億人の中国には年収1億円以上の層が360万人いる」という。さらに「集客には(1)(呼びたい客の)ターゲッティング(2)(成功の青写真を描く)構想力(3)(人が人を呼ぶ)ネットワーク──の3つが必要」と話し、ベンチャー企業の成功者らしい精緻でスケールの大きい誘客案を紹介した。
シンポジウムでは、コーディネーターを石川氏が、パネリストを見並陽─JR東日本常務、浜田健一郎ANA総合研究所社長、吉田利直JAL執行役員、岩村敬元国土交通事務次官、神蔵会長、伊東会長の6人が務めた。
400人の聴衆も参加しての意見交換では、石川氏の「蔵王はなぜだめになったか」という問いかけに対して、「観光地化が進んで生活感のない魅力の乏しい町になってしまった」(旅館経営者・男性)、「観光客に対するホスピタリティで欠ける点があった」(ラーメン店経営者・女性)、「交通機関の接続が悪かったり、外貨両替ができなかったりする。ユーザーフレンドリーになっていない」(パネリスト)、「情報発信がまだまだ足りない」(パネリスト)、「温泉地全体の一体感が足りない」(学生時代に旅館でアルバイト経験のあるリピーターの男性)などの意見と反省が出された。このほかにも多数の建設的意見が出され、聴衆は熱心に聞き入り、メモを取っていた。
シンポジウムの様子