本白根山噴火の被害なし
上信越高原国立公園の中にある万座温泉(群馬県嬬恋村)。標高1800メートルの場所にあり、「車で来れる、一番高いところにある温泉地」と万座温泉観光協会会長で万座プリンスホテル支配人でもある塚本亨さん。
日本屈指の硫黄含有量を誇る、白濁、黄濁したお湯は多くの温泉ファンを引き付ける。が、このところ客足が遠のいている。1月の、草津白根山の本白根山噴火の影響だ。
万座温泉は規制区域外にも関わらず、風評被害に悩まされた。
塚本さんは「キャンセルが相次ぎ、当館だけでも2~3割減少した」と言い、万座ホテル聚楽総支配人、鈴木教郎さんも「メディアで噴火関連の映像が流れるたびにキャンセルが出た」と嘆く。鈴木さんによると、ゴールデンウイークの客足も鈍く、従来5月に入ってくる夏休みの予約も低調に推移している。「風評被害が今も残っている」という。
噴火の際、草津温泉がクローズアップされたが、本白根山と草津温泉街は5キロ以上離れている。しかし、万座温泉はわずか2キロにすぎない。距離の近さを知っている人がキャンセルに踏み切ったことは想像に難くない。
万座温泉の風評被害を払しょくするため、嬬恋村は近畿日本ツーリストと組み、新宿発着の1泊2日(3月31日~4月1日)のバスツアーを企画・実施した(経費の一部を負担)。210人が参加したという。
現在検討しているのが、じゃらんや楽天トラベルなど、ネットエージェントのホームページへのバナー広告掲載だ。「嬬恋村の理解を得て、何とか実現させたい」と塚本さんは意欲を示す。
「被害は全くない。安心して来てほしい」と塚本さんと鈴木さん。万座温泉には万座プリンスホテル、万座高原ホテル、万座温泉日進舘、万座ホテル聚楽、万座亭、豊国館、嬬恋プリンスホテルの7軒があるが、通常営業している。
各宿泊施設もさまざまなプランを用意し、宿泊客を迎える。
万座プリンスホテルは「美と健康と癒し」をテーマに、星空ヒュッテの営業や星空観賞会、ほろよいセミナーなどを開催。万座ホテル聚楽は6月20日まで、万座ハイウェイの往復通行料金(普通車で2100円)を負担し、宿泊客の旅費を軽減するサービスを実施した。今後も知恵を絞ったプランを企画、消費者に訴えていく。
5月12日には万座の豊かな自然環境の情報発信基地となる、「万座しぜん情報館」がオープンした。環境省が整備を進めていた施設で、万座名物の空吹き(噴煙)などを望める屋外展望テラスを備え、観光案内所、バス待合所も兼ねている。入館は無料。
館長の石塚徹さんが案内する自然観察会(万探ツアー、有料)などもあり、万座の意外な面を知ることができる。
天空の温泉地、万座温泉。これからの季節、涼しい環境下で楽しめる登山や高原トレッキングは最高のアクティビティだ。運が良ければ奇麗な星空も見ることができる。「安心・安全な万座温泉に来て」と関係者は口をそろえる。
塚本 亨会長
5月にオープンした万座しぜん情報館
万座お参りコースにある薬師堂。周囲は万座温泉独特の景観だ