石井啓一国土交通相は9月20日の定例会見で、民泊法案の提出時期を2017年の通常国会とする考えを明らかにした。民泊以外にも、観光関係の法改正に取り組む。旅行業の委託を受けて宿泊施設や交通機関などの手配を行うランドオペレーターの規制などを盛り込んだ旅行業法の改正法案、業務独占の規制を廃止する通訳案内士法の改正法案を通常国会に提出する方針も示した。
民泊法案の国会への提出時期は、政府の規制改革実施計画(6月閣議決定)では「今年度中」とされ、秋の臨時国会(9月26日招集)が視野に入っていたが、1月に招集される通常国会に先送りされた。
民泊法案について観光庁の田村明比古長官は、9月21日の専門紙向け会見で「骨格はほぼできているが、いくつかの論点については丁寧な調整が必要だ。その最たるものが年間提供日数の上限、地域の実情の反映の仕方」と説明した。
政府は、民泊の制度の大枠を示した規制改革実施計画で、年間提供日数の上限を「半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数を設定する」としており、日数の具体化が課題。また、住居専用地域での民泊に関して「地域の実情に応じて条例等により実施できないことも可能にする」と盛り込んでいるが、地域ごとの対応に関係する部分も調整が残っているとみられる。
年間提供日数の上限をめぐっては、競争条件の平等化、違法営業への懸念などの観点から日数を極力抑えたい旅館・ホテル業界と、民泊解禁をビジネス拡大の好機として日数を最大化したい不動産賃貸業界などとの間で意見の隔たりが大きい。両業界は関係省庁、国会議員への要望活動を強化しており、政府の判断が注目されている。
一方の旅行業法に関しては、ランドオペレーターの規制と、着地型旅行の流通促進に向けた法改正を目指している。制度設計の方向性を議論するため、有識者や旅行業者をメンバーとする検討会を近く立ち上げる。
ランドオペレーターの規制では、旅行業に登録していない事業者の実態を行政が把握できるように登録制度などを創設。旅行者の安全に関わる業務の適正化などについて行政の権限も明確化する方針。
着地型旅行商品の流通促進に関する法改正も検討。「着地型旅行の取り組みがなかなか進まない。どうしたら商品が売れるようになるか。長年の課題」(田村長官)。地方の宿泊施設、地域の観光組織などに商品の造成・販売に関する要望もあることから、検討会などで方向性を探る。
また、通訳案内士法に関しては、政府の規制改革実施計画で業務独占の廃止が決まっている。国家試験に合格しなくても有償での通訳ガイド業務が可能になるが、名称独占によって存続する通訳案内士のあり方などを有識者検討会で議論しており、その提言などを踏まえて法改正を目指す。
第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)
- 1位草津、2位下呂、3位道後