熊本地震、復興へ動き、各地で対応協議


地震に負けず、竹田の観光・商工を盛り上げようと気勢を上げる首藤市長ら関係者(4月26日)

地震に負けず、竹田の観光・商工を盛り上げようと気勢を上げる首藤市長ら関係者(4月26日)

「熊本地震」の発生から1カ月が経過した。熊本、大分両県を中心とした九州全域の観光地で実害や風評被害に苦しむ中、復興に向けた動きも徐々に出始めている。両県をはじめ九州域内の観光地の現状を取材した。

 熊本県・阿蘇市観光協会の稲吉淳一会長(阿蘇プラザホテル社長)は、「旅館組合(阿蘇温泉観光旅館協同組合)加盟の19軒中、17軒が営業中。当館は現在、工事や医療チームなど復興関係の受け入れが100%で、観光のお客さまはいない状況だ」と言う。

 同館は建物に大きな被害はなかったものの、温泉の湧出が一部止まるなどの実害があり、6月末までは復興支援従事者中心の受け入れとなっている。7月1日から一般の観光客も支障なく受け入れられるよう、準備を進めている状況だ。

 阿蘇温泉旅組ではこの17日に総会を開き、復興に向けた施策を協議する予定だ。

 大分県・由布院温泉は9日現在、旅館組合加盟の宿泊施設91軒中77軒、飲食や土産品などの協会加盟店は9割の168軒が通常営業を行っている。「余震がいつ来るか分からないので安全確保に努めながら対応している」と観光協会の生野敬嗣事務局長。ゴールデンウイーク(GW)は後半天候が崩れた影響もあり人出が鈍かったが、8日には震災の影響による運休から再開したJR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」が由布院駅に震災後初めて停車した。「明るい話題が一つでも欲しい中での再開で喜んでいる」(生野事務局長)。今後も日曜、火曜日に由布院駅に停車する。

 大分県由布市の湯平温泉は宿泊施設に大きな被害はなかったものの、風評被害の影響でGWは予約の半数以上がキャンセルになった。訪日客が8割を占める「山城屋」の二宮謙児社長によると「外国人のお客さまのほうが地震に対して敏感で、震災直後は11月の予約までキャンセルが出た。しかし現在は、キャンセルが一段落し、新しい予約が増え始めている。8月ごろには震災前の状態に戻れるかも」と期待を寄せる。湯平温泉は恒例の「湯平温泉まつり」を22日に開催し、元気な姿をアピールする。

 「6〜7月は梅雨などもあって、例年観光客は少ない。その後、夏休みの時にどれだけ(客足を)回復させるかだ。今はそのタイミングを見定めている状況」—大分県竹田市の商工観光課職員は、地震で落ち込んだ観光客を呼び戻す対策についてこう話す。

 4月26日、市は観光・商工緊急対策会議を開き震災の影響を確認した。その上で出席者は「頑張ろう」と気勢を上げ、「地震に負けない」という気持ちを一つにした。

 市によると、旅館・ホテルを含めほとんどの施設が通常営業をしている。しかし、キャンセルは出ており、同19日現在、その数は1978件、2万9835人に上る。GWについても、地震発生前には7割以上が予約で埋まっていたが、同22日現在で約3割まで落ち込んだ。

 「余震が続いており、『安全です』と言えないのが痛い。風評被害も出ている」というが、夏の観光シーズンに向け、竹田の“元気”をアピールするチャンスをうかがっている。

 4月30日には熊本、大分両県の10市町の首長らが福岡市内に集まり、地元の観光をPRした。福岡市の呼びかけで実現したもので、首藤勝次市長も参加し、竹田への観光をアピールした。

 ほかにも九州域内の旅館関係者は次のように話している。

熊本県旅館ホテル生活衛生同業組合、熊本市観光旅館ホテル協同組合、日本旅館協会熊本県支部事務局長、林田祐典氏
 2回の大きな地震、特に本震直後には営業を停止せざるをえない宿泊施設も多かった。こんなに大きな地震に遭遇すると「途方に暮れてしまう」のだが、最近は余震も少なくなり、日に日に被害調査や片づけを終えて営業を再開する施設も増えている。

 県旅館ホテル生活衛生同業組合の総会は、当初5月24日の予定だったが、6月中頃に延期した。総会で全県の被害状況確認や今後の前向きな対応策の検討が行われると思う。

熊本県・杖立温泉「杖立観光ホテルひぜんや」河津豊四郎社長
 今、一番の問題は阿蘇を中心に2次交通が失われたこと。国道212号線が全面通行止めになり10月1日の開通予定となっている。そのため福岡から日田を経由する通常ルートが使えず、遠回りを余儀なくされている。

 以前の観光ルートが使えないことから、今ある素材をもっと深掘りすることが魅力アップにつながると思う。今、提案したいのは小倉駅からのレンタカープラン。宮崎にも大分にも熊本にもアクセスできる。まずは関西、中国地区のお客さまに目を向けてキャラバン等を行いたいと考えている。

熊本県・人吉温泉「あゆの里」有村隆徳会長
 人吉観光は平常通りだが、個人、団体を問わず観光客のキャンセルは多く、地元の旅行や宴会も中止になっている。

 熊本、九州の観光が元気を取り戻すには、まずは余震が収まり、被害を受けた地域が復旧することが大事だ。誘客キャンペーンなども考えたいが余震や被災地域の状況を踏まえた上で実施の時期を見定める必要がある。

大分県・別府温泉「おにやまホテル」上月敬一郎社長(大分県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長)

 別府をはじめ施設に被害がなかった地域でも、外国人を含めてキャンセルが多い。九州は周遊観光が多く、団体ツアーに影響が出ている。大手旅行会社の集まりなどで対応を協議したい。個人客向けには小回りのきくインターネットでの情報発信が重要になる。各施設ともにホームページなどで地元の情報や特別プランを発信している。

 連休始めには安倍首相にも視察に来ていただいたが、被害を受けた地域への支援はもとより、キャンセルといった経済的な被害にも公的な支援をお願いしたい。雇用調整助成金についても状況を把握し、宿泊施設が利用しやすい運用を要望したい。

長崎県・雲仙温泉観光協会、秀山裕史事務局長
 地震による被害はまったくないが、4月24日集計で2万5千人の予約キャンセルがあり、風評被害がだいぶ出ている。観光客に来てもらうため、ミヤマキリシマの開花状況など旬の観光情報をSNSで発信している。

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