東京都台東区の澤の屋旅館はこのほど、外国人宿泊客を対象に実施した旅行動向の調査結果をまとめた。下町・谷中にある家族経営の12室の旅館で、宿泊客の9割は外国人FIT(個人旅行者)。客室稼働率は90%前後を維持している。国土交通相からインバウンドの“お手本”として「ビジット・ジャパン大使」にも任命されている館主の澤功氏は、FITの誘客に取り組みたい旅館や地域に役立ててほしいと調査結果を公開している。
調査は公益財団法人日本交通公社との共同研究。調査期間は17年7月~18年6月。澤の屋旅館の外国人宿泊客727人の回答を集計した。
回答者の国籍のエリア別構成比は、欧州が54.3%、北米が20.6%、オセアニアが15.3%、アジアが7.4%。国別の上位はフランス、米国、豪州、英国など。
観光目的の旅行が多く、年齢層は50歳以上が32.0%、30歳代が28.2%で約6割。初訪日は全体の54.1%、訪日経験2回以上が41.5%。
宿泊客の日本滞在日数は平均17.3日。澤の屋旅館の滞在日数は平均3.6日だった。国内の訪問先を記入してもらった結果は、いわゆるゴールデンルート上の観光地、主要都市、世界遺産を持つ地域などが多いが、金沢(石川県)、松本(長野県)、渋温泉(同)、妻籠(同)、城崎温泉(兵庫県)、直島(香川県)なども多く挙げられ、地方訪問が拡大している状況がうかがえた。
日本のどこを訪問するかを選ぶ際の情報源は、複数選択で「ガイドブック」67.7%、「旅行情報ウェブサイト」55.6%、「旅行レビューサイト」42.1%が上位。友人や家族からの情報も重視されている。「動画ウェブサイト」は15.7%、「SNS」は6.4%だった。
日本滞在中に利用した宿泊施設は、複数選択で「旅館」34.8%、「ホテル」19.1%、「ホステル・ゲストハウス・カプセルホテル」10.3%、「個人宅・民泊」8.1%など。
一方で宿泊先に澤の屋旅館を選択した理由の上位は、「伝統的な和室を求めて」67.4%、「トリップアドバイザーや他のレビューサイトの評価が高かったから」43.6%、「ガイドブックの評価が高かったから」37.6%、「家庭的な雰囲気」31.9%、「周辺が魅力的だから」28.4%などだった。
欧米豪を中心とするFITに澤の屋旅館が選ばれる理由を館主の澤氏は「家族旅館そのままのおもてなし」として、「外国人FITはさまざまな宿泊施設を利用しているが、家族旅館を好んで選ぶ旅行者も多い。指摘された不便は改善してきたが、OTAも使っていないし、特別なことはしていない。小さな旅館にも外国人客で生き残る道はある」と話した。
澤の屋旅館の澤功氏