日本経団連は26日までに、「わが国観光のフロンティアを切り開く」と題する提言をまとめ、公表した。提言は観光分野の包括的な成長戦略を取りまとめたもので、政府が6月に策定する「新成長戦略」に反映させるよう働きかけていく意向だ。観光産業の発展には国内需要の拡大とともに、訪日外客の増加が不可欠との認識に立ち、観光産業の国際競争力強化やインフラ整備などについて、具体的な施策を示している。
観光分野に対する政策提言については、16日に日本商工会議所が「観光立“地域”による観光立国の具体化を目指して」を観光庁に提出しており今回の日本経団連の提言とあわせ、経済界の観光に対する関心の大きさがうかがえる。
提言は、国際競争力をつけるには観光コンテンツの強化が必要とし、産業観光やグリーンツーリズム、メディカルツーリズムの推進のほか、映画やアニメなどエンターテイメントと観光の連携などにも取り組み、幅広い観光ニーズをくみ取るよう求めた。また、MICE誘致に関連し、「将来的にはカジノを含めたIR(リゾート施設と会議施設の一体型運営)も検討すべきだ」とした。
観光コンテンツを効果的に発信する体制整備にも言及。具体的には、グローバルネットワークチャンネルに訪日観光誘致CMや観光専門番組を放送するなどして日本のイメージアップ戦略を展開したり、日本の観光関連情報すべてにワンストップでアクセスできるようなポータルサイトの構築を挙げた。
また、インフラ整備では旅館・ホテルの外客受け入れ態勢の改善を求めた。案内表示の多言語化対応ととともに、言語面での不便、不安を感じる客をサポートするため、多言語コールセンターの設置を早急に進めるべきだとした。
提言は休暇取得の分散化について、「需要の平準化、雇用安定に一定の効果がある」と評価しているが、十分な準備期間の確保、実証実験による効果・問題点の検証が不可欠と慎重な対応を求めた。
国に対してはJNTOの機能強化を提言し「組織の位置づけ、性格を含めた抜本的な見直しを行う」とした。さらに、業界団体についても再編・統合を図る必要があると主張した。