日本旅館協会(2699会員)の通常総会が13日、東京都港区のホテルインターコンチネンタル東京ベイで開かれた。針谷了会長は、旅館・ホテルの生産性向上に注力する考えを強調。今年度は生産性向上に向けて改善活動セミナーを全国10カ所で開催する。新法が成立した民泊の問題では、制度運用を具体化する政省令、都道府県などが民泊を制限する条例に関して、旅館業界の意見を反映させるため、陳情活動を継続する姿勢を示した。
生産性向上について針谷会長は、人手不足の深刻化などを受けて、「IT化、機械化、マルチスキル、シフトの改善など、現場レベルの改善活動を推進し、生産性を上げることで、他の業界に負けない待遇を用意し、優秀な人材を旅館業界に招き入れる必要がある」と述べた。
政府が5月に「生産性向上国民運動推進協議会」を立ち上げ、安倍晋三首相がサービス産業などの生産性の改革を促す方針を示したことを踏まえ、針谷会長は「旅館・ホテル業、サービス業の生産性向上は、国家的に見ても大切になっている。この機会に生産性の向上に取り組むべき」と訴えた。
旅館協会では労務委員会を中心に、観光庁と連携して昨年度実施した生産性向上に関するモデル事業、ワークショップ事業の成果を会員施設に普及していく。さらに現場レベルでの取り組みを促すため、今年度は専門家を講師とした改善活動セミナーを全国で開催する。
現場レベルでの改善活動と併せて取り組む旅館・ホテルの財務の改善に向けては、旅館用に協会で策定した統一会計基準の普及、厳格な発生主義会計による月次決算の普及を推進する。今年度の改善活動セミナーの中で会員施設に導入を呼びかける。
通常国会で成立した民泊新法(住宅宿泊事業法)に関して針谷会長は、「われわれのビジネスの根幹に関わる問題。法律には、政令、省令で定めるとした個所が53カ所もある。政令、省令によって状況は大きく違ってくる」と指摘し、引き続き国や国会議員への陳情活動を続ける。
民泊が生活環境の悪化を招く場合には、都道府県、保健所設置市などが条例で実施を制限できるとした新法の規定については、「都道府県などへの陳情が大切になる。都道府県などは条例制定に関し市町村の意見を聴くという政府の答弁もあったので、市町村への陳情も必要だ。本部として万全の態勢で各地の陳情活動をフォローしていく」(針谷会長)。
このほか支部の役員交代に伴う本部役員の補充選任として、住友武秀氏(徳島グランドホテル偕楽園)が理事を退任し、梯学氏(ホテルサンシャイン徳島)が新しい理事に就任した。
今年度の事業計画では、生産性向上の推進事業、民泊問題の陳情活動のほか、五つの委員会を中心に各種事業を実施する。このうちIT戦略委員会では、昨年度の販売額が9千万円を超えた直販支援事業「オープン・ウェブ」への参画を引き続き会員に呼びかける。労務委員会では、外国人雇用の促進に関する課題に他の宿泊業団体と連携して取り組む。