日本政策投資銀行は、国内観光地の活性化策を探るリポート「地域を挙げたホスピタリティ向上戦略」をまとめた。旅館・ホテル、宿泊客、自治体、観光団体を対象にアンケート調査などを実施。リピーター率や営業実績に優れる旅館・ホテルほど、顧客満足度を高めるためのサービスが充実していることを裏付けた。政投銀では、旅館・ホテル、観光地の持続的経営にはリピーターの維持、増加が重要だと分析し、地域全体でホスピタリティの向上、魅力ある観光地づくりに取り組む必要性を提言している。
アンケート調査は05年から06年にかけて実施した。回答者数は、宿泊施設が国際観光旅館連盟の会員旅館・ホテルを中心に454軒、宿泊客が1159人、観光地に属する自治体が45団体、観光協会・温泉旅館組合が63団体。
旅館・ホテルに関する調査結果が興味深い。回答施設のうち、リピーター率30%以上、総消費単価2万円以上、定員稼働率50%以上という高い基準を同時に満たすのは22軒。この22軒と全体の平均値を各種サービスの実施率などで比較。顧客が宿泊施設を評価する上で重視する「料理」「施設」「接客」などの分野で比較すると、22軒の実施率は全体の平均値を大きく上回る結果になった。
料理関係では、分量や好き嫌いといった「顧客の好みに配慮」しているのは、22軒では86.4%に上るのに対し、全体では73.3%。地場産食材の「使用割合が5割以上」では、22軒で63.6%に対し、全体は43.6%。有機農法の食材を使用したメニュー提供は、22軒では36.4%だが、全体は13.3%だった。
施設関係では、顧客別やテーマ別に設けたコンセプトフロアを持っているのが22軒で45.5%、全体で30.0%。バリアフリーの全館導入は22軒では13.6%だったのに対し全体は5.2%。
接客関係では、社内で定期的に接客研修を実施しているのが22軒で54.5%、全体では34.8%。接客研修の結果を事後にチェックしているのは22軒で63.6%だが、全体では49.8%だった。
マーケティングについては、顧客データを蓄積、分析している旅館・ホテルが、22軒では86.4%に達しているが、全体では61.2%にとどまった。
また、観光地経営でも、旅館・ホテル経営と同様に、入込客数が伸びている地域ほど観光振興策が充実していることをうかがわせる結果が出た。46地域を対象に、入込客数の増加地域と減少地域に分けて比較すると、例えば景観保護に関する条例制定は、増加地域で40.9%に上ったが、減少地域では20.0%だった。
政投銀では、「観光地はグローバル化の波にさらされ、宿泊施設は過剰債務負担にあえぎ市場の変化に柔軟に対応できないところが多い」と現状を分析。こうした状況から「新たな国内観光需要を掘り起こすことは容易ではない」として、リピーターの維持、増加を図ることが重要と指摘した。調査結果から、宿泊施設、観光地のリピーターを維持、増加させるには、(1)食へのこだわり(2)顧客や環境への配慮(3)しっかりした人材育成(4)効果的なマーケティング──の4点について地域を挙げた取り組みが必要だと提言している。