政府は6月29日、観光立国推進基本計画を公表案通り閣議決定した。観光立国推進基本法に基づく今年度から5カ年の計画で、数値などの具体的目標を掲げ、達成に向けた施策を示した。基本目標には、2010年度までに、国内観光旅行の1人当たりの年間宿泊数を06年度推計の2.77泊に対し4泊にするなどの5項目を設定。宿泊産業に関しては、旅館業の設備投資の資金確保など経営基盤の強化を図り、日本旅館の魅力を向上させることを明記したほか、「泊食分離」などの新たなサービスの提供、販売方法の改善、生産性の向上などを推進することを盛り込んだ。
基本的な方針には、(1)国民の国内旅行および外国人の訪日旅行を拡大するとともに、国民の海外旅行を発展させる(2)将来にわたる豊かな国民生活の実現のため、観光の持続的な発展を推進する(3)地域住民が誇りと愛着を持つことのできる活力に満ちた地域社会を実現する(4)国際社会における名誉ある地位の確立のため、平和国家日本のソフトパワーの強化に貢献する──の4項目を挙げた。
目標はテーマごとに設定しているが、多様な関係者の取り組みを促進するため、代表的で分かりやすい5項目を「基本的な目標」に掲げた。国内観光旅行を年間4泊にする目標に加え、10年度までに(1)訪日外客を06年実績733万人に対し年間1千万人とし、将来的には日本人海外旅行者数と同程度にする(2)日本人の海外旅行者数を同1753万人に対し年間2千万人にする(3)国内の観光旅行消費額を05年度推計24兆4千万円に対し30兆円にする、(4)11年度までに国際会議の開催件数を05年実績168件に対し5割以上増加させて252件以上とし、アジア最大の開催国を目指す──。
講ずべき施策は、観光立国推進基本法が掲げる基本的施策の通り、「国際競争力の高い魅力ある観光地の形成」「観光産業の国際競争力の強化および観光の振興に寄与する人材の育成」「国際観光の振興」「観光旅行の促進のための環境整備」の4つのテーマで示した。
旅館・ホテルなど宿泊産業に対する施策も4テーマの中でそれぞれ示されている。旅館業界が急務の課題に挙げている金融問題に関する施策では、「我が国の伝統と文化を守り『おもてなしの心』で内外の旅行者を受け入れるという重要な役割を担っている旅館業について、新たな旅行者ニーズに対応した設備投資のための資金の確保など、その経営基盤の強化・確立を図り、日本旅館の魅力の向上を促進する」と明記した。
宿泊産業のサービスや流通に関しては、実証実験などを通じて「泊食分離」といった新たなサービスのビジネスモデルを構築し、普及に取り組む。また、宿泊施設に関する情報提供の充実や販売方法の改善、生産性の向上を推進し、国際競争力を強化する。
宿泊施設の外客への対応では、国際放送受信設備と高速通信設備の導入率を主要施設で06年度末の10%程度から11年度までに50%に引き上げる目標を設けた。
観光旅行を促進するための環境整備では、ニューツーリズムの創出・流通の促進、休暇の取得促進・分散化、公共施設などのバリアフリー化、観光地の環境や景観の保全などの施策を挙げている。
基本計画は、社会情勢の変化などを踏まえ、おおむね3年後をメドに見直す。目標の達成状況、施策の推進状況については、毎年度点検を行う。