昨年12月に国連が制定した「世界津波の日」の11月5日、東京都内で政府主催の初の関連事業が行われた。内閣官房国土強靭化推進室が「世界津波の日フォーラム」、内閣府が「津波防災の日啓発イベント『東日本大震災の教訓を未来へ』」を開催。フォーラムでは巨大津波災害に備えるための国土強靭化対策などを3人の専門家が講演。啓発イベントでは岩手県釜石市と高知県黒潮町の中学生が、それぞれが行う防災教育の取り組みを発表した。
◇
フォーラムは津波など巨大災害に備える国土強靭化に関する情報の共有、意見交換を目的に開催。国土強靭化に取り組む実務家として、塚越保祐氏(世界銀行駐日特別代表)、ビクトル・オレジャーナ氏(チリ共和国内務省国家緊急対策室次官)、藤井聡氏(内閣官房参与、京都大学大学院教授)の3氏が登壇した。
塚越氏はバングラデシュとインドで起こるサイクロン被害について、避難路やシェルターの設置などインフラ整備が進んでいることで死者が激減している現状を解説。
オレジャーナ氏はチリ政府が国民への防災教育に力を入れ、災害時の被害者減少に成果を上げ
ている実績を述べた。
藤井氏は災害を機に経済成長が止まった国の具体例を挙げ、政府が進める国土強靭化計画の重要性を訴えた。
主催者から松本純・国土強靭化担当相、来賓から世界津波の日の制定を提唱した二階俊博・衆院議員と、仁坂吉伸・和歌山県知事、三浦惺・レジリエンスジャパン推進協議会会長があいさつ。
フリーアナウンサーで語り部の平野啓子さんは、津波から多くの人々の命を救った和歌山県の事業家、濱口梧陵の物語「稲むらの火」を朗読した。
◇
啓発イベントでは、岩手県釜石市の釜石中学校、高知県黒潮町の大方中学校と佐賀中学校の生徒が、それぞれが進める防災教育の取り組みを発表した。
東日本大震災による津波の被害を受けた釜石中学校は、震災前から津波を想定した訓練など防災教育を行い、その成果で生徒のほぼ全員が災害時に無事に避難した。
南海トラフ地震による津波被害が想定される高知県黒潮町の中学校も、地域合同の避難訓練の実施や自衛隊員による防災講話を聞くなど、学校で進めている防災教育の実例を紹介した。
防災の専門家、片田敏孝氏(群馬大学大学院教授)、今村文彦氏(東北大学災害科学国際研究所所長)、末永正志氏(元・釜石市消防防災課長)と、東日本大震災当時、釜石市の中学校に在籍した群馬大学2年の小笠原舞さん、女優で作家の中江有里さんは、各中学校の取り組みについて感想を述べた。
中江さんらを交えたトークセッションでは、「自分の身は自分で守る」「普段の心構えが大切」「防災教育を子供だけでなく大人たちに浸透させることが課題」など、意見や提言が上がった。
主催者を代表して松本洋平・内閣府副大臣があいさつ。内閣府が「津波防災ひろめ隊」に起用した全国各地の「ゆるキャラ」によるアトラクションも行った。