調理師の育成が思うように進まない—。愛媛県旅館ホテル生活衛生同業組合(大木正治理事長)は、厚生労働省の補助事業を活用し、調理師の育成事業に取り組んでいる。業務多忙、経営合理化などで調理師の育成に十分な人員、時間を割けない旅館・ホテルが増える中、組合が講習会を開いて育成を支援した。衛生管理、食物アレルギー対策、郷土料理の調理技術などを学んでもらっている。
大規模な施設の調理部門を支える人材の確保はもとより、小規模な施設では、経営者が調理を担当する場合も多く、調理師の育成は宿の後継者の育成に直結する課題となっている。また、郷土料理や伝統的な調理技術を受け継ぐ人材の育成は、地域の観光魅力を維持する上でも不可欠な要素となっている。
地域を挙げて調理師の育成に乗り出そうと、同組合では今年度、厚労省の生活衛生関係営業対策事業を導入、約100万円の補助金を受けた。事業委員会を組織し、地元の調理師会、栄養士会、自治体の衛生管理担当部署などの協力を得て講習会を企画した。
衛生管理、食物アレルギー対策をテーマにした講習会は、10月26日に松山市内で開かれ、若手調理師を中心に約80人が参加した。保健所、栄養士会の担当者を講師に、専門的な知識、管理態勢の重要性などを学んだ。
伝統的な調理技術や郷土料理の講習会については、愛媛県内でも食材、調理法、味付けなどに地域の特性があることから、東予、中予、南予の3地区に分けて開催することにした。
東予地区の調理講習会は今月5日、今治市内で開かれ、若手調理師ら約20人が参加した。鯛めし、鯛のチリ蒸し、イギス豆腐などの郷土料理5品をベテラン調理師の指導で実際に調理した。調理講習会は来年1月までに中予、南予地区でも開催する。
同組合ではすべての講習会が終了した後、組合員の旅館・ホテルを対象にしたアンケート調査を行い、事業の成果を把握する予定。調査結果は今後の組合の事業立案などにも反映させる。
ベテラン調理師が郷土料理の調理技術を若手に指導した