経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)は28日開いた会合で、苦境にあえぐ中小企業や第3セクターの再生を支援する「地域力再生機構」(仮称)の創設を決めた。3月に解散した産業再生機構の“地方版”となる。
同日会見した大田弘子経済財政担当相は、「地域の場合は面的な再生が必要」との考えを示し、企業再生に加え、産業再生機構のように個別の温泉旅館ではなく、鬼怒川温泉(栃木)全体を支援したような、いわゆる「面的再生」など包括的な再生を目指す組織であることを強調した。
機構創設は御手洗冨士夫日本経団連会長ら民間議員4人が提案。「地域経済の再生を図り、成長力を強化するため、地域の企業、地域金融機関、自治体が一体となった『包括的戦略』が必要」として、そのスキームを示した。
機構は来年春の発足を目指す。設置期間は5年で「この間、民間ファンド、事業再生ビジネス、人材ビジネスを最大限活用・育成し、現時点では民間ビジネスでは担い切れていない部分を主に担当する」という。
スタッフは産業再生機構OBや民間の専門家、大企業から集める。
再生対象は「地域の中規模企業」としており、売上高20億円以上の企業を想定。不良債権の買い取りや出資などの金融支援を行うとともに、中小企業には経営の分かる人が不足していることを踏まえ、単なる経営相談だけでなく、人材の紹介、派遣にも重点を置く「経営参画型」を目指す。
また、地域再生ファンドなど民間ファンドとの協調姿勢をとり、機構の業務も「できる限り外部委託する」方針だ。これに関連して大田担当相は「地域に多くの民間ファンドがあるが、必ずしもよく機能していないところもある。その地域にいろいろなリソースがあるものをマッチングさせていく機能が必要」と指摘した。
地方の中小企業再生については経済産業省が管轄する「中小企業再生支援協議会」があり、棲み分けが課題の1つとなりそうだ。
今後、機構がどういった基準を作り支援先企業を選ぶのか注目される。ただ、経営不振の旅館・ホテルにとっては再生の選択肢が増えるのは歓迎すべき事態といえなくもない。