国際観光旅客税540億円、観光財源の使い道は


デジタルマーケや観光資源整備に

6省庁の関係施策に充当

 政府の2020年度当初予算案のうち国際観光旅客税の税収(以下、観光財源)を充当する予算は、観光庁と関係5省庁の合計で540億円が計上されている。観光財源が通年で予算化されるのは19年度に続いて2年目。充当事業は、デジタル技術を活用した訪日プロモーション、出入国・通関の環境整備、文化資源や国立公園のインバウンド活用などの継続事業に加え、スノーリゾートの形成促進などの新規事業が追加された。観光財源の使い道を見てみよう。

 観光庁が執行する観光財源の充当予算は226億4千万円で、主な事業は次の通りだ。

ICTの活用等による先進的プロモーションの実施(63億1千万円)

 デジタルマーケティング技術を活用した情報発信で訪日外国人の誘客につなげる。インターネットの閲覧履歴などを分析して個人の興味、関心を把握し、それに応じたプロモーション動画などを発信する。19年度からの継続事業で予算額は23%増。欧米豪向けに実施しているが、アジア市場向けにも展開する。

公共交通利用環境の革新等(44億円)

 公共交通事業者や交通旅客施設の設置者などが対象の補助事業。訪日外国人を地方に誘客するため、空港、港湾から観光地に至る交通機関について多言語対応、Wi―Fi、トイレの洋式化、キャッシュレス決済の整備などをセットで支援する。併せて2次交通の整備、観光地型MaaSの構築に向けた交通情報のデジタル化を後押しする。

ICT等を活用した多言語対応等による観光地の「まちあるき」の満足度向上(25億4千万円)

 訪日外国人旅行者が多い観光地で、鉄道の駅などから個々の観光スポットに至るエリアの多言語案内、Wi―Fi、キャッシュレス決済対応などを面的に整備する。自治体、事業者などを支援する19年度から継続事業。

スノーリゾート形成促進事業(20億円)

 訪日スキー・スノーボード客の誘致拡大に向けて地域を挙げて形成計画を策定したDMOや事業者に補助金を交付する。採択件数は未定だが、政府は国際競争力が高いスノーリゾートを全国10カ所程度で支援する方針。形成計画に位置付けられた情報発信や受け入れ環境の整備、グリーン期を含めたコンテンツ充実、高機能な降雪機の導入などの事業を支援する。

 ナイトタイム等の活用による新たな時間市場の創出(10億円)

訪日外国人旅行者の消費拡大や長期滞在を促すため、夜間、早朝の観光を活性化させるDMOなどの取り組みを支援する。博物館や美術館、国立公園の活用では、文化庁、環境省とも連携する。

DMOの改革(7億4千万円)

 DMOの体制強化とコンテンツ造成への支援が柱。体制強化では、外部の専門人材の登用、中核人材の育成に補助金を交付する。コンテンツ造成では、DMOと連携した地方運輸局を実施主体に、日本政府観光局(JNTO)の訪日グローバルキャンペーンなどに対応した滞在型プログラムの創出を支援する。

◇  ◇

観光庁以外の省庁が執行する観光財源の予算は313億5千万円で、充当事業は次の通りだ。

円滑な出入国・通関等の環境整備(法務省81億8千万円、財務省35億3千万円)

 主要空港で顔認証ゲートの整備を推進し、訪日外国人の出国手続き、日本人の出・帰国手続きを迅速化する。指紋取得機器「バイオカート」の導入で審査待ち時間も短縮する。また、アプリで携帯品を電子申告した場合に迅速な通関を可能にするEゲートの整備を進める。

文化資源を活用したインバウンドのための環境整備(文化庁98億4千万円)

 文化財の多言語解説、博物館などのキャッシュレス化や夜間・早朝コンテンツの造成を支援する。日本の歴史や文化をAR(拡張現実)、高精細画像などの先端技術を駆使して発信するほか、訪日外国人向けの体験プログラムとして活用する事業などを支援する。

国立公園のインバウンドに向けた環境整備(環境省68億6千万円)

 インバウンドへの活用に向けて国立公園の受け入れ環境整備、コンテンツ造成、魅力発信などを推進する。廃屋の撤去、既存施設のリノベーション、野生動物の観察ツアーなどの造成、グランピングの開発など。

三の丸尚蔵館の整備(宮内庁29億4千万円)

 三の丸尚蔵館は、皇室に受け継がれた絵画、書、工芸品などの美術品を収蔵する施設で、テーマに沿った展覧会などで公開されている。訪日外国人の新たな観光資源として活用するため、展示施設などを拡充する。

 

国際観光旅客税

 観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充、強化を図るための恒久的な財源として創設された。2019年1月7日に徴収を開始。日本人、外国人を問わず出国1回に付き千円を徴収している。20年度の税収は、19年10月までの訪日外国人旅行者数、出国日本人数の動向から算定されている。

 使途には、(1)ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備(2)わが国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化(3)地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上―の三つの分野が掲げられている。

 充当する施策の考え方は、(1)受益と負担の関係から負担者の納得が得られること(2)先進性が高く費用対効果が高い取り組みであること(3)地方創生をはじめとするわが国が直面する重要な政策課題に合致すること。

 国際観光旅客税を財源とする予算は、観光庁に一括計上した上で関係省庁に移し替えて執行される。ただ、宮内庁の三の丸尚蔵館の整備費は、皇室費として別の取り扱いのため、観光庁には計上されない。

 
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